現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』3月号においしくるメロンパンが登場!『theory』はおいしくるメロンパンのマスターピース。
このアルバムでこれまでの作品が1本の道でつながった(ナカシマ)
唯一無比のアンサンブルで描く最高傑作の誕生!
なぜ新作『theory』はかつてないほど鮮烈な物語を映し出すか
インタビュー=杉浦美恵 撮影=Kenta Sawada
5作目のミニアルバム『theory』は、この先、おいしくるメロンパンがそのキャリアを振り返るような場面が何度かあるとして、まず外すことのできない重要な作品として語られ続けるものになるだろう。3ピースのアンサンブルで白いキャンバスに風景を描くように、真っ白なページに物語を書き付けるように、音楽に向き合ってきた3人が、ついにこの境地にまでたどり着いたと思えるような、まさに彼らの表現の集大成。それでいて、これまででいちばん実験的で自由な作品にもなった。
彼らの音楽からは常に様々な情景や物語が想起されるが、それはこれまで不思議な抽象性を宿しながら、聴く者のインスピレーションを刺激してきた。今作にもその魅力はもちろん引き継がれているが、『theory』が孕む物語のスケールは、これまでになくダイナミックで鮮烈。端的に言えば、アルバム全体を通してのメッセージが明確なのだ。1曲目の“獣”が指し示す、生命の「セオリー」とでも言うべき、巻き込まれて流れていくようなテンポ感や展開からも、このアルバムが持つテーマ性が見えてくる。ひとりの人間は、二度と戻ることのできない時間の中で生きている。しかし生物の歴史が連綿と続いていく中にあっては、それは循環と捉えられ、我々はその「セオリー」の流れの一瞬を生きているに過ぎない。その抗えなさ、儚さを表現しながら、ラストの“斜陽”では、それゆえの生命のきらめきをも映し出す。間違いなく、彼らの最高傑作と言っていい。いつも「コンセプトは特に決めずに制作している」と語っているナカシマだが、今作ではどんな変化があったのだろうか。なぜこれほど鮮やかな物語を映し出すアルバムが出来上がったのだろうか。この最重要作について、メンバー3人にじっくり語ってもらおう。(杉浦美恵)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年3月号より抜粋)