2019年1月、高校の軽音楽部の友人同士で結成されたヤユヨ。2019年12月に公開した“さよなら前夜”のMVが120万再生を突破し注目を浴びた、リコ(Vo・G)、ぺっぺ(G・Cho)、はな(B・Cho)、すーちゃん(Dr・Cho)という現役大学生の4人からなる大阪のポップスバンドだ。
「日常や生活を意識して作られたヤユヨの曲が、聴いてくれた人の生活に普通に溶け込んで支えになってほしい」。そんな思いが込められたセカンドミニアルバム『THE ORDINARY LIFE』が6月16日にリリースされる。歌うようにメロディを奏でるざらざらとしたギター、弾むように躍動的なビート、表情豊かで迷いのないリコのボーカリゼーションが合わさったそのアンサンブルには確実にバンドマジックが存在し、聴き手のなんてことのない日常を鮮やかに彩る。
たとえば――。夜中にひとりベランダに出て、まばゆい星に想いを馳せ、胸をきゅっとつかむような甘酸っぱい陶酔に襲われる“星に願いを”。中盤のアンサンブルは特に聴きごたえがある。キュートでフリーキーでアップテンポなアンサンブルに乗せながら、喪失感に苛まれ素直になれなかった日々を振り返る“Yellow wave”にも。オリエンタルなギターの旋律がゆらめくシャボン玉のように消えてしまった甘い日々が歌われる“おとぎばなし”にも。タイトル通り、君の隣で君とふたりの日々への愛おしさと切なさをエモーショナルに高める“君の隣”にも――。歌われていることはとても私的でぽつんとした感情だが、多彩で遊び心のあるバンドアレンジによって、カラフルな連帯が広がっていく。そんな極上の彩りは、ウキウキ感が投影されたリコのボーカルが春の街で生きる「私の日常」を歌ったラストソング“春の街で”に凝縮されている。《私、今日も生きている/それだけで充分だけど/君といた春にはもう戻れない/明日もきっと生きて行く》。ヤユヨの楽曲が切なくも前向きに響く理由が、シンプルにとじ込められている。(小松香里)