現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』7月号に星野源が登場!今はわりと開けっぴろげというか。
「これが私です」っていうような、「どうぞ中に入ってきてください」みたいな
『不思議/創造』に至る日々、そのすべて
インタビュー=小栁大輔 撮影=Maciej Kucia
J-POPの最前線を推し進める等身大の革命を目撃し(“恋”)、ダンスミュージックの眩しさを知り(“SUN”)、音楽を多層に構成してみせるポップな遊び方に酔い(“アイデア”)、まだまっさらな国民的主題歌が生まれる瞬間に立ち会い(“ドラえもん”)、つまり僕たちはこの何年も、星野源の楽曲を通して、音楽の愛し方と向き合い方を知り、そのたびに新しくなっていく日々を積み重ねてきた。そして今また、僕たちの目の前には、星野源とともに歩いてゆく、新しい道が広がっている。
シングル『不思議/創造』は、やはり革新的な音楽集でありながら、堂々とスタンダードで、気づきとあたたかみが同時に押し寄せてくる、最高のシングルである。
“不思議”を聴くたびに、ああこれだ、と思う。
クールなビート、ウォームなアンサンブル。自由に上下する美しい旋律、歌。あなたと一緒に過ごすことの喜びも続いていく日々を過ごせることのありがたさも、乾杯したくなるような出来事も、「好き」であるということを伝えることも、伝えられないもどかしさもここにあり、身体を揺らす音が、胸に迫る言葉が、聴くたびごとに違っていく。
たくさんの思いを引きずりながら過ごした昨日が、そして「ああ、今日もわかってもらえなかった」とひとり歩く夜が(あくまで、自分の場合ですが)、一つひとつその存在を認められ、一本の長い線になっていくような静かな実感に包まれていく。
思いを伝えるだけでもなく、ただ心の複雑な有り様を綴るだけでもなく、「好き」と「孤独」を等しく重なるものとして描いてみせたこんなラブソングを、僕はほかに知らない。
人は人と出会い、人を好きになるから、ちゃんと孤独でいられる――。そんな大上段な真理を、素直に愛しく思えてくる。“不思議”を通奏低音のようにして過ごす日々は、一日が終わるたびに静かに承認されていくような気がする。
アイデアが弾むようにあふれ、「自分とはどんな人間か」が宣言される“創造”も、あるいは、《生きて踊ろう 僕らずっと独りだと/諦め進もう》と歌われる“うちで踊ろう(大晦日)”も、聴けば自分のなかのなにかが認められる実感がある。
人間のありのままを肯定しようとする音楽をポップミュージックと呼ぶのなら、今回のシングル『不思議/創造』もまた、星野源から届けられた、あたたかな思いに根ざした確かなポップミュージック集だと思う。今生まれてきてくれてよかったと、本当にそう思う。
“うちで踊ろう”が歌われた去年4月以来のインタビューになった。
星野源が重ねてきたこの1年、『不思議/創造』に至ることになったこの1年。
その大切な瞬間の積み重ねについて、じっくりと話してもらった。(小栁大輔)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年7月号より抜粋)