夢を抱いて生きる若き魂の光と影。最新EP『群青讃歌 / 遊生夢死』を考察する
文=小池宏和
9月30日に、Eveが最新EPとなる『群青讃歌 / 遊生夢死』をリリースした。新曲のタイトルチューン2作のほか、今春にデジタルリリースされMVも公開された“夜は仄か”など、全5曲を収録した作品になっている。
昨年の“廻廻奇譚”や“蒼のワルツ”、さらに遡れば“闇夜”なども含めて、彼の楽曲はTVや映画のアニメーション作品のテーマ曲として起用される機会が次第に増し、Eveはそんな角度からもポップカルチャーを彩ってくれるアーティストになった。最新EPに収められた新曲2曲も、テーマソングとして提供された楽曲たちである。ただし、単純に映像作品のテーマ曲として起用されるのとは異なっている。“遊生夢死”(読み:ユウセイボウシ)は、先にインディーアニメの巨大な祭典「Project Young.」の主題歌として使用され、また“群青讃歌”は、スマホゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』アニバーサリーソングとなっている。つまり、この作品におけるEveは、自ら歩んできた表現者としての道のりを振り返りつつ、音楽や映像、ゲームといった様々な分野の次世代クリエイターたちを鼓舞し、ユースカルチャーをサポートする。そんな姿勢を感じさせているのである。これはとても重要なポイントだ。
それでは、『群青讃歌 / 遊生夢死』の収録曲について具体的に見ていこう。EPの収録曲順やタイトル表記とは前後してしまうが、まずは先行してMVが公開され、プレオーダー&サブスクで先行配信されていた“遊生夢死”である。フォーキーでアーシーなサウンドプロダクションは雄大な景色の広がりを喚起し、メロディはその景色を前に少しの心細さを滲ませるような、力強さと切なさを併せ持つナンバーに仕上げられている。《漂う思いのせいで 満たされない雨で/立ち込める 爛れてく 鈍色の月》という歌い出しの歌詞からしても、決して心は晴れやかではなく、どんよりと重く曇っている。《白昼夢の底に浸かったまんまの/くたばりぞこないへ》といった吐き捨てるような不穏で鋭い言葉は、近年のEve作品では触れる機会が少なくなっていたものだ。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年11月号より抜粋)