グラミー賞ノミネーション発表。ビヨンセ(9)、ケンドリック(8)、アデル(7)。ウェット・レッグ、スティーヴ・レイシー、ターンスタイルも健闘。米メディアの反応など。

グラミー賞ノミネーション発表。ビヨンセ(9)、ケンドリック(8)、アデル(7)。ウェット・レッグ、スティーヴ・レイシー、ターンスタイルも健闘。米メディアの反応など。 - Ⓒ Grammy 2021Ⓒ Grammy 2021

グラミー賞のノミネートが発表された。最多ノミネーションは、ビヨンセの9部門、続いて、ケンドリック・ラマー8部門、アデル7部門だ。さらにウェット・レッグがなんと5部門!

スティーヴ・レイシーが4部門、ターンスタイルが3部門でノミネートされ健闘している。

全ての結果はこちら。
https://pitchfork.com/news/grammy-nominations-2023-see-the-full-list-here/

主要4部門の結果は以下の通り。

―― アルバム賞
ABBA - Voyage
Adele - 30
Bad Bunny - Un Verano Sin Ti
Beyoncé - Renaissance
Brandi Carlile - In These Silent Days
Coldplay - Music of the Spheres
Harry Styles - Harry’s House
Kendrick Lamar - Mr. Morale & the Big Steppers
Lizzo - Special
Mary J. Blige - Good Morning Gorgeous (Deluxe)

―― レコード賞
ABBA - Don’t Shut Me Down
Adele - Easy on Me
Beyoncé - Break My Soul
Brandi Carlile Featuring Lucius - You and Me on the Rock
Doja Cat - Woman
Harry Styles - As It Was
Kendrick Lamar - The Heart Part 5
Lizzo - About Damn Time
Mary J. Blige - Good Morning Gorgeous
Steve Lacy - Bad Habit

―― 楽曲賞(作詞、作曲家、ソングライターへの賞)
Adele - Easy on Me
Beyoncé - Break My Soul
Bonnie Raitt - Just Like That
DJ Khaled Featuring Rick Ross, Lil Wayne, Jay-Z, John Legend & Fridayy - God Did
Gayle - ABCDEFU
Harry Styles - As It Was
Kendrick Lamar - The Heart Part 5
Lizzo - About Damn Time
Steve Lacy - Bad Habit
Taylor Swift - All Too Well (10 Minute Version) (The Short Film)

―― 新人賞
Anitta
Domi & JD Beck
Latto
Måneskin
Molly Tuttle
Muni Long
Omar Apollo
Samara Joy
Tobe Nwigwe
Wet Leg

さらにロック部門
―― ロックアルバム
The Black Keys - Dropout Boogie
Elvis Costello & The Imposters - The Boy Named If
Idles - Crawler
Machine Gun Kelly - Mainstream Sellout
Ozzy Osbourne - Patient Number 9
Spoon - Lucifer on the Sofa

―― ロックソング
Brandi Carlile - Broken Horses
Ozzy Osbourne Featuring Jeff Beck - Patient Number 9
Red Hot Chili Peppers - Black Summer
Turnstile - Blackout
The War on Drugs - Harmonia’s Dream

―― ロックパフォーマンス
Beck - Old Man
The Black Keys - Wild Child
Brandi Carlile - Broken Horses
Bryan Adams - So Happy It Hurts
Idles - Crawl!
Ozzy Osbourne Featuring Jeff Beck - Patient Number 9
Turnstile - Holiday

―― メタルパフォーマンス
Ghost - Call Me Little Sunshine
Megadeth - We’ll Be Back
Muse - Kill or Be Killed
Ozzy Osbourne Featuring Tony Iommi - Degradation Rules
Turnstile - Blackout

―― オルタナティブミュージックアルバム
Arcade Fire - WE
Big Thief - Dragon New Warm Mountain I Believe in You
Björk - Fossora
Wet Leg - Wet Leg
Yeah Yeah Yeahs - Cool It Down

―― オルタナティブパフォーマンス
Arctic Monkeys - There’d Better Be a Mirrorball
Big Thief - Certainty
Florence and the Machine - King
Wet Leg - Chaise Lounge
Yeah Yeah Yeahs Featuring Perfume Genius - Spitting Off the Edge of the World


米メディアの反応も含め、雑感いくつか。

1)ビヨンセが夫のJAY-Zと並んで史上最高のノミネート数

ビヨンセが今回最多の9部門でノミネートされ、キャリアでのノミネート数が計88!これがなんと夫のJAY-Zと並んでアーティストとしては史上最高のノミネート数だ。素晴らしい!おめでとうございます。

しかし、何度も書くように、2人ともアルバム賞を受賞したことはないし、主要4部門では、ビヨンセが”Single Ladies”で楽曲賞を1度受賞しただけ。2人とも史上最高のノミネート数なのに合わせて1回って。毎回のことだけど屈辱的にすら感じる。さて今回はどうなるのか見どころだ。

2)テイラー・スウィフトが、ポール・マッカートニーライオネル・リッチーの記録と並ぶ。
テイラー・スウィフトが、楽曲賞でノミネートされ、これで計6回ノミネートされたことになる。これはポール・マッカートニーとライオネル・リッチーと並ぶ史上最多だ。

テイラーの場合すごいのは、ここでノミネートされた”All Too Well(10 Mininte Version)(The Short Film)”が、もとは10年前に発売された『レッド』に収録された曲であり、その時はノミネートされなかったことだ。テイラーも、「14歳の時に書き始めた」この曲のノミネートについて、喜びのインスタをしていた。

「”All Too Well”は、これまで書いた曲の中でも一番誇りに思う曲で、しかもグラミー賞で、ソングライターに贈られる、これまで一度も受賞したことがない楽興賞のノミネートされるなんて、あまりに重大で、シュールリアル」
「10分間叫びながら、みんながいなかったらこんなことも起きなかった、と思いたい」

この曲は、アルバム発売当初は、レーベルにもシングルではないと言われていたのだが、長年ファンの一番好きな曲の1曲だった。今回それで10分バーションで発表した。

テイラーは、この曲のMVで監督、脚本も手がけていて、アカデミー賞も狙っている。

グラミー賞ノミネーション発表。ビヨンセ(9)、ケンドリック(8)、アデル(7)。ウェット・レッグ、スティーヴ・レイシー、ターンスタイルも健闘。米メディアの反応など。

3)驚きのノミーネと無視されたアーティスト
毎年のことだがなんでノミネートされたんだ?と驚くアーティストと、その逆になんでノミネートされなかった?と怒りたくなるアーティストがいるものだが、NYタイムズ、バラエティ、ビルボードなどを参考にして、米メディアの反応をまとめたい。

a. 本来もっとノミネートされるべきだったバッド・バニーとロザリア 。
今年メディアが一番怒っていたのは、この2人がほぼ無視されたことだ。

今年、最も売れたと言って良いアーティスト、バッド・バニーと、今年最も評価の高かったアーティスト、ロザリアが揃ってほぼ無視。全メディアが書き立てている。

売り上げも評価も、ノミネートから外れるとなると基準は何?とまた言いたくなるが、バッド・バニーは、全スペイン語のアルバムとしてアルバム賞にノミネートされた初のアーティストとはなった。BTS然り、まだまだ英語以外の作品への偏見がある証拠だ。

b. 驚きのノミネート
ノミネートされなくて驚くアーティストもいるが、ノミネートされて驚くアーティストがいるのもグラミー賞ならでは。今年は、ABBA, メアリーJブライジ、コールドプレイなどが多くのメディアにまさかノミネートされると思っていなかったと書かれていた。

4)その他。
祝!ウェット・レッグが5部門!
デビュー作を4月に発表する以前にシングルで脚光を浴びて、一瞬にして世界中で人気を獲得してしまった2人組。グラミー賞でも主要部門のひとつである新人賞を含む5部門でノミネートされるとは快挙。おめでとうございます!本人たちも興奮のツイートをしていた。

ウェット・レッグは2月に来日公演も決定している。
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12763

5)TikTokで大ヒットしたスティーヴ・レイシーが4部門!
今年TikTokで人気となり、”Bad Habit”が大ヒット。米シングルチャートでも3回も1位を獲得したスティーヴ・レイシーがその勢いのままなんと主要部門で2部門のレコード賞、楽曲賞もノミネートされ、計4部門もノミネートされた。
@mom.imart issa bad habit🥴 #fypシ #beerpong #trickshots #edit ♬ Bad Habit - Steve Lacy

@333chrissy i washed my hands and took her out of the kitchen shes okay i promise #fyp #cat #onions ♬ Bad Habit - Steve Lacy

@kohnk

Took me a while but I did it

♬ Bad Habit - Steve Lacy

また今年は、スティーヴ・レイシー始め、ブランディ・カーライル、サム・スミス&キム・ペトラス、ビッグ・シーフなどLGBTQ+コミュニティのアーティストが主要部門含め数多くノミネートされているのも話題となっている。

さらにTikTokと言えば、Gayleも主要部門でノミネートされている。グラミーはTikTokとはつながっているようだ。

6)ターンスタイルが3部門もノミネート
個人的には、ロック部門では、数々の売り上げ記録を樹立し、さらに『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』にさえ曲が起用されていて、今年の顔とすら言えるレッド・ホット・チリ・ペッパーズがたった1部門しかノミネートされていなくてかなりびっくりした。

その代わりと言ってはなんだが、なんとターンスタイルが3部門もノミネートされている。おめでとうございます!

しかしこのロック部門のノミネートってすごく不思議。みなさん今年自分が聴いた、または今年を代表するだろうロックアルバム5枚を思い浮かべて、ここにノミネートされているアルバムと多く重なります?

この不思議なノミネートの中にいきなり3部門も食い込んだターンスタイルすごい。そう言えば最近ビリー・アイリッシュもライブを観に行ってインスタを投稿してた。

ちなみに、キャリア25年以上のスプーンが初ノミネート。またなんと9年ぶりの新作『Cool It Down』を発表したヤー・ヤー・ヤーズも2部門でノミネートされた。おめでとうございます!

グラミー賞ノミネーション発表。ビヨンセ(9)、ケンドリック(8)、アデル(7)。ウェット・レッグ、スティーヴ・レイシー、ターンスタイルも健闘。米メディアの反応など。

7)シルク・ソニック、ドレイクザ・ウィークエンドは辞退
今年アルバムを提出しなかったアーティストも何人かいる。まず目立つのは、シルク・ソニックだ。ローリング・ストーン誌に提出した声明文によると、

今年のグラミー賞で”Leave the Door Open”が主要部門の2部門、レコード賞と楽曲賞を含む4部門も受賞したので、これ以上を望むのは贅沢、という理由だ。遠慮させていただきます、ということだ。

その他ドレイクとザ・ウィークエンドもアルバムを提出しなかった。彼らの場合は、遠慮させていただきます、というノリとは真逆で、間違いなく抗議として提出していない。今考えても、ザ・ウィークエンドが1部門もノミネートされなかったって本当に、事件だったと言えると思うが、今回のノミネートを見ていても、明らかにグラミー賞にノミネートされやすいアーティストがいて、もういい加減怒る気力もなくなってきた。

グラミー賞の発表は、来年LAで現地時間の2月5日に発表される。司会は去年同様トレバー・ノアだ。



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