ザ・チェインスモーカーズだけが快進撃を続けられる理由を徹底検証
2017.03.06 18:23
ザ・チェインスモーカーズの底知れなさはいったい何なのだろうか。はっきり言って、怖い。2017年に入ってからも新曲“Paris”公開に始まり、グラミーにおけるベスト・ダンス・レコーディング部門の受賞(“Don’t Let Me Down”)、デビュー・アルバム『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』のリリース決定(4月7日・全世界同時)といった話題を振りまいていたのだが、とりわけ強烈なのがコールドプレイとのコラボ曲“Something Like This”だ。先頃のTHE BRIT AWARDS 2017でもライブが披露されている。
“Something Just Like This”のライブ映像はこちらから。
“Something Just Like This”のリリック・ビデオはこちらから。
神話の英雄やコミック・ヒーローの名を並べ、「そのリストの中に僕はいない」とクリス・マーティンが歌い出す。夢見心地なタッチのアニメ仕立てMVも大概だが、ライブ映像では露骨にヒロイックで扇情的なクリスの振る舞いがヤバい。いや、クリスらしいと言えばらしいんだけど、むしろコールドプレイのスケール感と堂々渡り合えるチェインスモーカーズの曲調がヤバいと言うべきか。ちなみに、以前のチェインスモーカーズはこうです。
ザ・チェインスモーカーズ“#SELFIE”
ザ・チェインスモーカーズ“Let You Go ft. Great Good Fine Ok”
で、昨年のチェインスモーカーズがこう。華々しいプログレッシヴ・ハウスから、情緒的なトラップ・ソングへと変化している。
ザ・チェインスモーカーズ“Don't Let Me Down ft. Daya”
ザ・チェインスモーカーズ“Closer (Japanese Subtitles) ft. Halsey”
もともとDJ/プロデューサー・デュオとしてキャリアをスタートさせたドリューとアレックスのチェインスモーカーズだが、シーンに侵食する過程で次々にスタイルを変えてきた。ただ、刹那のドラマを切り取ってくる彼らの視線は一貫して残酷なほどリアルで、だからこそエモーショナルだ。激しく、美しく、ときには人間の滑稽さまでも抉り出してくる。
ザ・チェインスモーカーズはすべてを見透かしたようにポップ・ミュージックをデザインし、華々しいパーティやセックスの時間から、内気で繊細な心までを伝えてしまう。まるで敏腕A&Rのような知識と嗅覚で「ポップ」を捉え、実際に音で体現してしまうグループなのだ。来るアルバム『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』がどれだけの情報量をもたらす作品になるのか、皆目見当もつかない。(小池宏和)