エレカシロックの一大叙事詩
本作を初めて聴いた時はびっくりした。宮本浩次という男の魂の長い旅路を綴ったような壮大さと、彼をロック(=自由)へと誘い続ける激しいデーモンが、13曲からほとばしっていたから。部屋で作った打ち込みサウンドから情熱的なロックンロール、♪ヨロレイン~と中原中也の詩ような哀愁を感じさせる“九月の雨”まで、1曲1曲がまったく違っていながら、どの曲からも強烈なひとつのメッセージが伝わってくる。それは何かというと、「心に火を灯せ」ということだ。それが男にとっては新たな場所を目指す「旅」(“moonlight magic”“明日への記憶”“旅”“歩く男”)として描かれ、女にとっては「誰かを愛すること」や「祈り」(“彼女は買い物の帰り道”)として描かれる。最後の“悪魔メフィスト”に至っては、ダンテ『神曲』並みの熾烈な旅路まで飛び出しぎょっとしたが、「やってやろうぜ」「火を灯せ」という歌は何度聴いても背中を押され、不思議と力が湧いてくる。これがロックの魔力というものなのだ。(井上貴子)
収録曲:
1.moonlight magic
2.脱コミュニケーション
3.明日への記憶
4.九月の雨
5.旅
6.彼女は買い物の帰り道
7.歩く男
8.いつか見た夢を
9.赤き空よ!
10.夜の道
11.幸せよ、この指にとまれ
12.朝
13.悪魔メフィスト
※『ROCKIN'ON JAPAN』2016年1月号より転載
過去のレビューはエレファントカシマシのアーティストページをご確認下さい。
http://ro69.jp/artist/2218
次の更新は2017年3月19日(日)7:00です。(毎日7:00、19:00公開予定)