日本のガンズ・アンド・ローゼズ愛好家たちは恵まれている。12月20日、“パハップス”と題された新曲がCDフォーマットで登場したのだ。ごく普通の出来事のように思われるかもしれないが、この楽曲がこうした形でリリースに至っているのは全世界において我が国のみ。通常は配信プラットフォームを通じて聴くしかなく、どうしても盤で手に入れたい場合にはバンドのオフィシャルストアでアナログ7インチを購入するしかなかったところ、日本では特例的にこうした“通常”のリリースが実現したのだ。
2022年8月には同様に“ハード・スクール”のシングルが国内発売されているが、その際は来日公演が控えていたこともあり、来日記念盤という大義名分があった。そうした重要事項が伴っているわけでもないのに日本盤シングルが登場すること自体が、この出来事の特別さを感じさせる。
この“パハップス”は2023年8 月の時点でデジタルリリースされており、同月18日に行なわれたアメリカはピッツバーグの公演で初披露されている。アクセル・ローズの作曲者としての特性がコンパクトなサイズの中に詰め込まれた印象的な楽曲だ。そしてこのシングルにカップリング収録されているのが“ザ・ジェネラル”と銘打たれた最新曲である。こちらは11月2日、ハリウッド・ボウルでの公演時に初披露され、12月8日から配信開始に至っている。凝縮感のある“パハップス”に比べると、ボーカルメロディ自体がまだ練り込み段階にあるかのような曖昧な印象を伴う部分もあるが、繰り返し聴いていくうちに癖になる不思議な中毒性を孕んだ楽曲である。
特に迷うこともなく“新曲”という言葉を使ったが、これら2曲は、当事者による具体的な裏付け発言があるわけではないものの、アクセルがひとりでガンズの看板を掲げていた『チャイニーズ・デモクラシー』(2008年)当時の未発表楽曲を磨き上げたものだと推察され、スラッシュやダフ・マッケイガンも演奏には参加しているはずだが、当時のメンバーたちによる演奏も反映されているものとみられている。ちなみにプロデューサーとしてアクセルと共にクレジットされているのは、ガンズの再集結ツアーにおいてFOH(PAエンジニア)を務めてきたCaram Costanzoだ。
ガンズは11月5日のメキシコでのフェス出演を最後に2023年のツアーを終えており、現時点において今後の活動予定に関する明確な情報は公表されていない。ただ、こうしてすでに公表済の新曲の数も増えつつあるだけに、現布陣でのオリジナルアルバムの登場はさほど遠くない将来に実現するのではないかという期待が、当然のように頭をもたげてくる。ここは用心が必要とされるところだろう。ガンズをめぐる新情報は何の前触れもなく突然届けられるのが常だが、今回のシングル登場は、まさしく何かの前兆なのかもしれないのである。 (増田勇一)
ガンズ・アンド・ローゼズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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