まるで今号の特集を察していたかのパール・ジャム、4年ぶりの新作『ダーク・マター』だ。エディ・ヴェダーが「この作品はこれまでの最高作だと思う」と語ったという。発売前の景気付け程度に受け取る人も多いだろうが、これが聴くと改めてそう言いたくなるのも納得の素晴らしい内容で、激しく迫るものもあれば、示唆に富んだ言葉をスケール満点の演奏で胸の奥底にぶち込んでくる曲や切々と訴えるボーカルものもあったりと、複雑な要素が幾重にも折り重なり、まさにロック的な快感そのもの。
前作『ギガトン』も環境問題から身近なテーマまで彼ららしい切り口のアルバムで気にいったが、そこからさらにテンションを上げ、かつてのグランジ時代を彷彿とさせる爆発的な音が炸裂する。
エディを始めジェフ・アメン(B)、マイク・マクレディ(G)、ストーン・ゴッサード(G)、マット・キャメロン(Dr)の黄金ラインナップに加えレッド・ホット・チリ・ペッパーズを抜けたジョシュ・クリングホッファー(G)が加わり、1年以上前からリック・ルービンのシャングリラ・スタジオにこもったが、一番新しいメンバーであるマットでさえ、すでに20年以上となるバンドに新しいサムシングを加えるのにジョシュほど最適なプレイヤーもいなかったろう。さらにもう一点重要なパーツがあった。アンドリュー・ワットだ。
パール・ジャムの大ファン、多大な影響を受けたと公言しエディの22年のソロ作『アースリング』のプロデュースも務めた彼がついに射止めた到達点で、スタジオではメンバーすら忘れてる、かつてのプレイのようにやるようにというリクエストもあったそう。それが原点回帰じゃないが、バンドに初期衝動を自然に蘇らせたようで、スピード感溢れるオープニングから力任せに揺さぶるハードロックもの、さまざまな経験を経たバンドだからこそ描き出せるドラマチックな展開など、どんなタイプの曲も完成度が高い。
聴いてて熱くなり、自然とのめり込み、聴き終わった後にはエディの「最高作」の言葉に激しく共感するだろう。新しい黄金伝説の開始だ。 (大鷹俊一)
パール・ジャムの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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