The 1975の待望のニュー・アルバム、『ア・ブリーフ・インクワイアリー・イントゥ・オンライン・リレーションシップス』のリリースに向けて、日々断続的に情報がアップデートされ続けている今日この頃。ここではこれまで五月雨状に明かされてきた新作の情報を、いったん整理してみることにした。きたるXデーに向けたガイダンスとしてどうぞ!
The 1975のニュー・アルバムは2連作
前作『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』以来約2年ぶりとなるニュー・アルバム、『ア・ブリーフ・インクワイアリー・イントゥ・オンライン・リレーションシップス』は今年10月(11月説も)にリリース予定。
そしてさらには来年5月にもう一枚のニュー・アルバム『Notes On A Conditional Form』のリリースもすでにアナウンスされている。バンドは当初、新作のタイトルは彼らの初期EPと同名の『Music For Cars』だと発表。しかしのちに「Music For Cars」とは彼らの「ある時代」を表す名前だと訂正された。つまり、『ア・ブリーフ・インクワイアリー・イントゥ・オンライン・リレーションシップス』と『Notes On A Conditional Form』が「Music For Cars」時代に該当する作品ということになる。
このThe 1975の2連作は、イメージとしてはU2の『ソングス・オブ・イノセンス』と『ソングス・オブ・エクスペリエンス』の関係に近いと言えるかもしれない。もしくはコールドプレイの『ゴースト・ストーリーズ』と『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』?
第1作:『ア・ブリーフ・インクワイアリー・イントゥ・オンライン・リレーションシップス』(10〜11月リリース予定)
先行ニュー・アルバム、『ア・ブリーフ・インクワイアリー・イントゥ・オンライン・リレーションシップス』についてはかなり具体的になりつつある。すでに“GIVE YOURSELF A TRY”と“LOVE IT IF WE MADE IT”の新曲2曲が公開されており、“GIVE YOURSELF A TRY”のミュージック・ビデオでは真っ赤(オレンジ?)に髪を染めたマシューの最新ビジュアルも話題に。
ファンに送られてきた謎の手紙、街角でのゲリラ的ポスター掲示など、古典的とも言える方法で少しずつ同新作の情報を明かしてきたThe 1975。その意味深かつコンセプチュアルな手法に反して、先行シングル“GIVE YOURSELF A TRY”は少し軽すぎるのでは?と感じたほど超絶キャッチーなエレクトロ・ポップだった。
しかし、その歌詞を紐解いていくと、同ナンバーの軽さとは躁鬱的な二面性の賜物であることが理解できるはず。The 1975がミレニアル世代にアドバイスを送る体裁で綴られたその歌詞は、眩い成功の裏で深刻なドラッグ中毒に苦しんできたマシュー・ヒーリーが、かつての自分自身に語りかけているものでもあるからだ(「若い頃の自分に何を伝えたいかって? お前はこの先金持ちになって、ドラッグに溺れて、ネットであらゆる薬を買いまくることになるよ」)。それでも「挑戦してみよう」とポッピーに歌うこの曲は、マシューの二つに引き裂かれたメンタル・ヘルスのカリカチュアとも取れる。
そんな“GIVE YOURSELF A TRY”に対して、“LOVE IT IF WE MADE IT”はマシュー自身の問題と公共のイシューがより具体的にリンクしたナンバーになっている。トランプ大統領のツイート(「Thank you Kanye, very cool!」=トランプ支持を表明したカニエ・ウェストに対する感謝のメッセージ)や女性蔑視発言(「I moved on her like a bitch」)をそのまま引用した一節や、リル・ピープの死を悼む一節(「Rest in peace Lil Peep」)を含むこの歌のテーマは、まさに現代社会、政治を取り巻く問題の数々だ。
「何かを成し遂げられたら最高」とタイトルはまたしてもポジティブだが、「俺たちは置いてけぼりにされた、俺たちは現代の失敗作だ」と歌われることからも明らかなように、このタイトルはさらに直球の皮肉。ここで描かれているのは情報に翻弄され、本質からスポイルされた、ぶっ壊れた時代のぶっ壊れた世代についてなのだ。
彼らが新作について「レディオヘッドの『OKコンピューター』やザ・スミスの『クイーン・イズ・デッド』のようなアルバムを目指したい」と語っていた真意は、“LOVE IT IF WE MADE IT”の段階でほぼ明らかになったと言える。何れにしても『ア・ブリーフ・インクワイアリー・イントゥ・オンライン・リレーションシップス』が彼らの意識的なターニング・ポイントとなる作品であるのは間違いなさそうだ。
そして先日、3曲目の新曲となる“TOOTIMETOOTIMETOOTIME”が 8月15日に公開されることが発表された。
ちなみにマシューはファンと一緒に“TOOTIMETOOTIMETOOTIME”のミュージック・ビデオの撮影をしたことも明かしている。
また、同新作には昨年から噂になっていた新曲“It’s Not Living If It’s Not With You”も収録予定。マシューのヘロイン問題を真正面から取り上げた曲になっているとか。
第2作:『Notes On A Conditional Form』(2019年5月リリース予定)
来年の『Notes On A Conditional Form』もすでに制作が進んでいる。バンドは7月にLAに移動、そこで『Notes On A Conditional Form』のレコーディングを集中的に行なっているという。また、マシューは来年1月には『ア・ブリーフ・インクワイアリー・イントゥ・オンライン・リレーションシップス』と『Notes On A Conditional Form』のナンバーを披露するライブを行うと明かしている。
また、『Notes On A Conditional Form』にはマシューの父親で俳優のティム・ヒーリーが書いた曲も収録される予定。これは父ティムがマシューが11歳の頃に書いた曲だそうで、ティムは親子がピアノでセッションしているらしき写真もツイート!
散々焦らされた直近の半年間とは対照的に、ここから来年5月までは怒涛の展開が予想される。まずは8月15日の“TOOTIMETOOTIMETOOTIME”、そして夏の終わりと共にThe 1975のニュー・シーズンが始まる! (粉川しの)