ASIAN KUNG-FU GENERATION、またしても更新されたスタンダード。最新アルバム『プラネットフォークス』ロングレビュー

ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス』
発売中
ALBUM
ASIAN KUNG-FU GENERATION プラネットフォークス
節目を飾るニューアルバムはROTH BART BARON・三船雅也をゲストに迎えた“You To You”で始まる。シンフォニックな音の響きや美しいコーラスと、これぞアジカンという、僕らが待っていた王道のロックサウンドが混ざり合い、重なり合い、広がっていく。素晴らしい曲だ。その中でこんなことを歌っている。《ミュージックというディスカバリー/僕たちを繋ぐ線の上/ミュージックというディスカバリー/僕たちを隔てる線の上》。僕はこの言葉を聴いてこう思った。まさにこのアルバムは、バンドやその歴史、そしてさまざまなミュージシャンとの交流や音楽への好奇心という「繋ぐ線」と、しなやかに変化しながらも常に「ど真ん中」のロックバンドであり続けるアジカンが貫いてきた「隔てる線」の交差点で生まれたのだ、と。

前作『ホームタウン』はとても野心的に、サウンドのクオリティとそこから生まれる快感を追求した作品だった。その挑戦は単純に「邦楽的/洋楽的」という二軸で語れるようなものではなく、ロックバンドという表現形態にふさわしい音像、ロックバンドという「形」の魅力をブーストする音質をどう実現するかというトライアルだったと思う。今作『プラネットフォークス』はある意味でそのコンセプトをさらに押し広げたところで作られている。

過去最多の14曲というボリュームの中で、今作のアジカンが鳴らしている楽曲はじつに多彩で自由だ。重厚なギターでサイケデリアを描きながら美しいファルセットのサビで伸びやかに飛翔するビッグスケールの“De Arriba”、シティポップなサウンドが新鮮な“雨音”、ループ感のあるアコギのサウンドにのせて時代と自身の来し方に対するシリアスな心情を覗かせる“Gimme Hope”。それぞれの楽曲でそれに相応しい音色、アレンジが熟考されている。だが本当にすごいのは、そういうアルバムであるにもかかわらず全体の印象としてはアジカンらしい安心感と安定感がまず来るというところ。“Dororo”“ダイアローグ”“エンパシー”といったシングル曲もまさにそうだったが、2020年代のアジカン・スタンダードがこれだという感じがする。その白眉といえるのがchelmicoのRachelとOMSBをフィーチャーした“星の夜、ひかりの街”。ロックバンドとラッパーのコラボのよくあるパターンを想像すると驚くはずだ。ここでもふたりのラップは、アジカンの王道をアップデートするために存在している。(小川智宏)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年5月号より)


JAPAN最新号 表紙はSaucy Dog! マカロニえんぴつ/ゆず/宮本浩次/UNISON SQUARE GARDEN/Mr.Children/BUMP OF CHICKEN/Mrs. GREEN APPLE/My Hair is Bad
3月30日(水)に発売する『ROCKIN’ON JAPAN』5月号の表紙とラインナップを公開しました。今月号の表紙巻頭は、Saucy Dogです。 付録はSaucy Dogのフォトカードです。 そのほかラインナップは以下のとおり。 ●Saucy Dog ポップの新時代を歌うのは…
JAPAN最新号 表紙はSaucy Dog! マカロニえんぴつ/ゆず/宮本浩次/UNISON SQUARE GARDEN/Mr.Children/BUMP OF CHICKEN/Mrs. GREEN APPLE/My Hair is Bad

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする