BUMP OF CHICKEN/メットライフドーム

BUMP OF CHICKEN/メットライフドーム - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道

※以下のテキストでは、演奏曲のタイトルを一部表記しています。ご了承の上、お読みください。

ライブからの帰り道も、そして数日経った今もまだ、なんだか自分がオーロラを実際に見てきたような、そんな感覚の中にいる。「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」、メットライフドームでの初日公演を観て、まさに「体験」と呼ぶしかないようなライブだったなあとつくづく思う。先日リリースされた約3年5ヶ月ぶりのフルアルバム『aurora arc』は、BUMP OF CHICKENにとってどんなアルバムであるのか、その意味をライブでしっかりと感じ取ることができたような気もするし、「ライブ」というものの概念が、BUMPとオーディエンスの間でまたひとつ更新されたと感じられた、心があたたかくなるライブだった。壮大なスケール感を見せながら、心の距離はこれまでになく近いと感じられるような。

BUMP OF CHICKEN/メットライフドーム - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道
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発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』2019年8月号でのインタビューで、藤原基央(Vo・G)は、『aurora arc』について語っている。アルバム制作中にメンバー全員でオーロラを見に行ったこと、そしてそこに美しい景色があったということ以上に、全員で「見に行った」という、その事実、その体験にこそ心を奪われて“aurora arc”というインストゥルメンタル曲が完成したのだと言う。何か行動を起こした結果として得た景色よりも、「一緒にオーロラを見に行った」という行為自体が特別なのだと、そしてそれこそがBUMP OF CHICKENが表現したいことなのだという藤原の明確な思いが語られているこのインタビューを読み返せば、この日のライブで感じたことはまさしくその通りであって、BUMPは『aurora arc』という作品を「体験」する時間をオーディエンスと共有したかったのではないかと思った。そしてその思いは全方向にしっかりと届いた。

BUMP OF CHICKEN/メットライフドーム - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道
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アルバムを引っさげたツアーというのは久しぶりであったけれど、ライブの概念が更新されたと言ったのはそういう意味からだ。今回のアルバムで表現しようとしたこと、つまりは「体験」の中でしか生まれ得ない特別な思いがあるということを、文字通りの「体験」でもってバンドとリスナーとで共有する場として、この日のライブがあったということ。その体験はオーロラを見に行くのと同じく一期一会で、たとえまた明日も同じ現象がそこに現れるのだとしても、一度としてまったく同じ景色には出会えない。だから、この日藤原は「ツアー初日なのに、なんだかもうファイナルみたいな気分」だと言った。

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まだツアーは始まったばかりということもあって、セットリストなど詳細は書かないでおくけれど(でも「これは確実にやるでしょう」という楽曲については書かせてもらいますね)、たとえば“Aurora”では、透明感と深い奥行きを感じさせるサウンドで壮大な景色をイメージさせながら、そこには確実にBUMP OF CHICKENの確かな現在地がにじんでいた。同曲の美しいMVを手がけた林響太郎監督によるオイルアートの映像が、ライブ演奏と相まって、幻想と生々しさとを同時に表現していた。それにしてもこの美しい「体験」は、メットライフドームという、半分屋外のような、半分屋内のような、特異な空間に非常にマッチしていた。まだ明るさを携える夕暮れの時間から徐々に夜へと近づいていく自然な景色の移り変わりにも、まるでオーロラを待つような、マジカルな時間を感じ取った。直井由文(B)は、「なんか夏のにおいしない? みんなで青春してる感じがキュンキュンする」と言った。夏が近づく季節に感じる「オーロラ」。こんな体験、ほんと今、この場所だけのものだ。だから「青春」っていう言葉が直井からも自然に出てきたんじゃないかと思う。

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“月虹”は、ライブ演奏を楽しみにしている人も多いと思うけれど、この楽曲のバンドアンサンブルはライブでよりその魅力を感じることができた。性急なビートとエモーショナルなギターサウンド、力強い歌声──見事だった。個人的にとても楽しみにしていた“新世界”のライブ演奏も、期待を上回る「体験」が用意されていた。もともとはロッテのスペシャルアニメーション『ベイビーアイラブユーだぜ』に提供した楽曲で、そのアニメーションを手がけた松本理恵監督によるリアレンジ映像が演奏のバックに流れ、やはりこの曲、軽やかでワクワクして、あたたかくて、最高だと思う。改めて、このライブに足を運んだことを嬉しく思う瞬間でもあったから。

BUMP OF CHICKEN/メットライフドーム - Photo by 富永よしえPhoto by 富永よしえ

最後に藤原は、このアルバム、そしてこのツアーに対する思いを口にした。「アルバムが出て、聴いてくれて、今日ここでみんなに来てもらって、本当に嬉しいです」と。こう書き起こせば、とてもごく当たり前の普通の言葉になってしまう。けれど、あの場で感じ取ったものは、とてもこの文字だけでは伝わらない。「どれだけの気持ちでありがとうと言っているか、たぶん誰にもわかんないだろうな」というさらなる藤原の言葉も引けば、この当たり前の言葉の持つ熱が伝わるかもしれない。そしてツアーは続く。各地でその日にしかない「体験」が待っていることだろう。(杉浦美恵)

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