現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』3月号にMrs. GREEN APPLE「ゼンジン未到とリライアンス〜復誦編〜」Zepp DiverCity(Tokyo)公演のレポートを掲載!
生まれ変わった過去曲に新たな「始まりの歌」“Soranji”――
フェーズ2初のツアーで、ミセスの「青春の先」を見た
文=小川智宏 撮影=鳥居洋介
Mrs. GREEN APPLEの「フェーズ2」とはなんなのか。リリースされる音源を聴いて、ミュージックビデオを観て、ライブを観て、ずっと考えてきた。確かに鳴らされる音も、歌われる言葉も、ステージ上でのパフォーマンスも大きく変わった気がするし、これまでとは違ったレベルのチャレンジが、バンドの活動全般にわたって繰り広げられていることはわかる。だが、本当にリニューアルされたのはそうしたいわば表層的な部分ではなく、彼らの精神的な部分――何と向き合って音楽を生み出すのか、どこに向かって音楽を鳴らすのか、どういう生き様をここから刻んでいくのか、そんな心の在り方なのではないか。意外にも彼らにとって初めてのZeppツアーとなった「ゼンジン未到とリライアンス〜復誦編〜」、セミファイナルとなった12月26日・Zepp DiverCity(Tokyo)でのライブを観て、そしてその最後に披露された“Soranji”の圧倒的な深みと迫力を受け取って、僕はそう思った。
映画『ラーゲリより愛を込めて』の主題歌として書き下ろされたこの曲は、第二次世界大戦終了後を舞台にした、いってみれば曲を書いた大森元貴(Vo・G)からすれば「遠い」題材でもあった。曲を始める前の長いMCの中で彼は、そのオファーをもらった時「カラフルで疾走感があってポップで、『青春!』みたいなイメージが強い中で、どうやって自分を投影してミセスとして出していったらいいんだろうって」悩んだと明かしていた。「でも、繋がりや愛を信じて前に向かっていく勇気や生きていることの尊さを、しっかりと書き記しておけばいいんだなと」気づいたところから、このあまりにも美しいバラードは生まれたのだという。
そうやって自分の内面や生の本質のほうへどこまでも潜っていって見つけたものを、3人で音楽にすること。それができるようになったという変化こそが、つまりミセスの新しいフェーズなのだと思った。それは「ミセスであること」が出発点でありゴールであった頃とは(それはそれでバンドとしてとても美しい在り方だと思うが)明らかに違う。バンドをやる理由や音楽を作る意味が、根本的にシフトチェンジしたのだ。「自由に聴いてね。僕はこの曲を歌うとちょっと寂しくなっちゃうんだけど」――“Soranji”を歌い出す間際に大森のこぼした一言がとても印象的だったのだが、それは「寂しい」という言葉が、この曲を通してミセスが住み慣れた場所から遠く離れて旅を始めたことを物語っていたからなのだと思う。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年3月号より抜粋)
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【JAPAN最新号】Mrs. GREEN APPLE、生まれ変わった過去曲に新たな「始まりの歌」“Soranji”――フェーズ2初のツアーで、ミセスの「青春の先」を見た
2023.02.01 17:00