去年あんま曲を作らなかったんですよ。普段からめちゃ曲を作っちゃうので、もったいないなって思って。
めっちゃいいメロディも、朝ドラに全振りしたいなって。ほんと、それぐらいでした

現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』6月号表紙巻頭にあいみょんが登場！

新たな名曲“愛の花”誕生！
「“愛の花”インタビュー」「あいみょんとライブ、8のモーメント」のロングインタビュー2本立てで送る、春のあいみょん大特集！

インタビュー＝小栁大輔　撮影＝川島小鳥

最初は、「2023年春、あいみょん愛を歌う」というコピーをつけようと思っていた。
なかなかいいじゃないか。だが、次の瞬間、僕は、ん？と思った。
すぐに書棚から前回のあいみょん表紙号を取り出してみる。
「2020年夏、あいみょんの今」とある。ほとんどおんなじやないか。
自分のシンプルワンパターン思考を懺悔したいわけではない。JAPANコピーの王道感をアピールしたいわけでもない。
あいみょんを聴くとは、あいみょんの新曲を待つとはつまりそういうことなのではないか、ということが言いたいのである。

季節がめぐり、僕たちは少しずつ変わり、いくつもの眠れない夜を越え、喜怒哀楽を感じ、少しの新たな出会いと少しの別れを繰り返し、今年も春を待っている。
僕はふと、そんなふうにあいみょんの新曲を待っている自分を感じる。
新たな季節がめぐってくる瞬間を慈しむように、今年の桜は少し早いね、だけど、今年の桜もやっぱりきれいだね、なんて穏やかにつぶやくように、あいみょんの新曲を愛する。
季節がめぐり、今年も春が来て、そしてこうしてあいみょんの新曲が届くたびに、ああやっぱりあいみょんの新曲はいいね、かわいいね、だけどなんだか切ないね、なんてつぶやきながら、自分が重ねてきたいくつかの思い出とたくさんの日々を、少しだけ愛しく振り返ってみたりする。
あいみょんを聴く、というのはなんだかそんな静かで、とても大切な営み、という感じがする。

だが、言うまでもなく、あいみょんは当たり前のように名曲を作っているわけではない。名曲は名曲が生まれる環境から生まれてくる。あいみょんの作曲サイクルには、ちゃんと今年もめぐってきた季節を慈しむように、当たり前のようにやって来る、しかし二度と来ない「その年の季節」を、きちんと愛で、きちんと覚えておきたいと願うような、人としての丁寧な生き方こそが基本にあるような気がする。
それがあいみょんの名曲が今日も生まれてくる理由であり、僕たちが今日もあいみょんの新曲を愛し続ける必然なんじゃないかと思うのだ。
“愛の花”は、2023年春、今年にしかないこの息吹を優しく吸い込んだ素晴らしい名曲だ。

今回のインタビューは、“愛の花”が生まれてくるまでにあいみょんが出会ったいくつかの奇跡をめぐる対話になっている。
生きていくことを、何ひとつ見落とさないあいみょんに訪れた、日常的な奇跡をめぐる話になっている。どこか心が晴れるような内容だと思う。
そして、もうひとつ、あいみょんのライブストーリーを聞かせてもらった。これは僕の念願だったインタビューで、昨年憧れの甲子園のステージに立った今だからこそ、あいみょんがそれまで何度も重ねてきた季節を経た心境を、あらためて聞きたいと思った。

あいみょんに思うのは、これからもこうして、季節がめぐり、いつも当たり前のように、しかし二度と同じ花は咲かないように、日常の奇跡のような曲を歌い続けてほしい、ということだけだ。
これからもちゃんと生きて、あいみょんの新曲に静かに感動できる日々を過ごしていきたいと思う。（小栁大輔）

（『ROCKIN'ON JAPAN』2023年6月号より抜粋）

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