スピッツ全アルバムレビュー 3rd『惑星のかけら』【『醒めない』リリース記念】

2016年7月27日(水)に15thアルバム『醒めない』をリリースするスピッツ。
RO69ではリリースを記念して、これまでの全アルバムを振り返るディスクレビュー特集を行います。
『醒めない』リリースまで、1日1作品ずつレビューを掲載します。
本日の作品は1992年発表の3rd『惑星のかけら』です。

スピッツ全アルバムレビュー 3rd『惑星のかけら』【『醒めない』リリース記念】

1992年9月26日リリースの、フルアルバムとしては3作目にあたる作品。2nd『名前をつけてやる』と今作の間に、初めて外部アレンジャー(長谷川智樹)とがっちり組んでオーケストラアレンジを導入したミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』を作ったが、それに続くこのアルバムは逆にストレートなバンドサウンドに回帰。
しかも、2ndまでのUKギターバンド+ネオアコースティック的な方向ではなく、当時全世界的に隆盛を誇っていたグランジ/アメリカンオルタナティヴ方向の、ラウドなギターサウンドに寄った曲が多くなっている。
なので、リリース当時はびっくりした記憶があるが、今聴き直すと「そういやちょっとアコースティックっぽいの少ないかな」くらいで、特に違和感はない。その違和感のなさの理由はふたつ。ひとつめは、この作品以降のスピッツの音の歩みを知っている耳で聴くと、これくらいの振れ幅は全然範疇内である、ということ。そしてもうひとつは、草野マサムネ(Vo・G)のソングライティングのテーマが一貫しているから、ということだと思う。
1stアルバムから……いや、その前のインディリリースのミニアルバムから、マサムネの楽曲は「死」と「セックス」というふたつを大きなテーマにし続けている。そしてそれを、現実の日常と脳内の妄想世界に敷居を設けず、どちらも等価に扱い、等価に言葉とメロディにする。そのやりかたが一貫している、という話だ。で、「死」と「セックス」って掘っても掘っても掘りきれない大きなテーマなので、今でもそれを続けることができている、とも言える。これ、スピッツの音楽性って基本的にずーっと一緒で変わらないのに、なぜ聴く方は飽きないんだろう、「ああまたこれかあ」ってならないんだろう、という謎の理由のひとつにもなっていると思う。
まあ、マサムネのソングライティング力があまりにも突出しているから、というシンプルな理由もあるのだが、たとえば“ハニーハニー”で初めて歌詞の一部に英語を取り入れる、という(マサムネ的には)これまでの禁を破る実験までやっているのに、その「スピッツの変わらない世界」は揺らいでないし。

ちなみに、このアルバムに入っている人気曲“僕の天使マリ”を最初に披露したライブを僕は観ているのだが(確かこのアルバムのリリース前だった)、マサムネ、「ジッタリン・ジンに影響されて作りました」みたいなことを言っていたのを憶えています。(兵庫慎司)


なお、スピッツは2016年7月30日(土)発売『ROCKIN'ON JAPAN 9月号』の表紙に登場します。
お楽しみに!

公開済の作品はこちら
2016年7月13日 2nd『名前をつけてやる』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145667
2016年7月12日 1st『スピッツ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145597
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