現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』9月号にSaucy Dogが登場！（Saucy Dogを好きになってくれた）きっかけがなんであれ、自分たちにも責任はある。
自分たちのバンドだから、導いてあげないとっていう責任がある（石原）
傑作『サニーボトル』をめぐる真実のストーリー
吹き荒れる「サウシー旋風」の中心で今3人が思い感じること。
躍進を続ける自分たちへの誇りも、バンドが大きくなるが故の不安も、すべてを赤裸々に語った超ロングインタビュー
インタビュー＝徳山弘基 撮影＝永瀬沙世
1年前にリリースされた“シンデレラボーイ”が未だにロングヒットを続けていることは異例だし、それだけこの曲が時代に支持されている証明でもあるのだが、このヒットを起点に他の既発曲も音楽ファンにしっかり浸透しているというのが実にSaucy Dogらしい。“シンデレラボーイ”でハマったあるリスナーが、次に“いつか”を聴いて圧倒された後に、“結”のストーリーに没入してしまう。あるいは別のリスナーは“コンタクトケース”の喪失感に涙したかと思えば、“ゴーストバスター”の歌詞に勇気づけられ、さらに“シーグラス”の素晴らしいメロディに聴き入ってしまう。一曲一曲を丁寧に紡ぎあげてきたこれまでの活動が完全に功を奏したと言えるし、過去の楽曲を瞬時に掘れるサブスク時代の恩恵をフルに享受しているとも言える。要するにあらかじめ「沼」は用意されており、あとはダイブするだけ、というわけなのだ。
そんな中、新たにリリースされた新作『サニーボトル』は、この吹き荒れる「サウシー旋風」をさらに加速させる傑作であるのと同時に、彼らの楽曲至上主義な性格が浮き彫りとなる重要作品だ。石原が描き出す歌詞世界はよりポップに、よりディープに研ぎ澄まされ、3人のバンドアンサンブルはより緻密で解放的になり、そのうえ音の一粒一粒に至るまで極上のサウンドプロダクションが施されている。ステレオタイプな世間のイメージに振り回されることもなく、タイアップのプレッシャーに潰されることもなく、ひたすらいい曲を最高の状態で提供することに集中した結果、Saucy Dogはさらに自由で、さらに挑戦的なバンドに成長することができた。
もちろんバンドの注目度が一気に増してファンベースが拡大した今、メンバーに迷いや戸惑いがないと言えば嘘になるし、実際そうしたリアルでストレートな気持ちもこのインタビューでは吐露されている。がしかし、この宝物のような楽曲が目の前にある限り、Saucy Dogは大丈夫だし、残り半年でさらなる飛躍を遂げてくれると思う。
この傑作『サニーボトル』を聴けば聴くほど、その予感が確信へと変わっていくのだ。（徳山弘基）
（『ROCKIN'ON JAPAN』2022年9月号より抜粋）
『ROCKIN’ON JAPAN』2022年9月号
