走って、笑って、思い切り歌う!
アリーナツアー「ま・あ・る」東京・代々木公演、極上メロディの祭典、そのすべてを観た
文=杉浦美恵 撮影=永峰拓也
あいみょん史上最大規模となるアリーナツアー、「AIMYON TOUR 2022“ま・あ・る”」は今年4月、兵庫県ワールド記念ホールからスタートし、全国14ヶ所を各2公演ずつで巡る全28公演の日程で組まれていた。ツアー後半、東京公演を終えたあと、バンドメンバーに新型コロナウイルス感染症の陽性判定が出たため、大阪と愛知の公演は8月に延期となってしまったが、これからこのライブに足を運ぶ予定の人は、本当に素晴らしいライブが待っているので楽しみに待っていてほしいし、ここに記すレポートは演奏曲やライブ内容にも及ぶので、ネタバレを避けたい人は、ライブを観終えてから読んでいただけるとありがたい。
とにかくあいみょんのアコギを含むバンドサウンドが素晴らしく心地好いグルーヴを生んでいた。面白いくらいに「歌」がしなやかに、エモーショナルに響く最高のライブだったと思う。前回ツアーから引き続きライブを共に作り上げるバンドメンバーたちとのリレーションも、より互いに遠慮がなくなったというか、チームとして共有する温度が親密度を増している。今回の「ま・あ・る」という、どこか可愛いツアータイトルは、日本全国に歌を届けに「まわる」という意味もありながら、「まあるく繋がる」という意味も込められていて、それはあいみょんと足を運んだファンとの繋がりを意味する(あるいは会場にいるオーディエンスが歌で繋がる景色をイメージする)ものなのだろうが、その「ま・あ・る」というあたたかな雰囲気を作り出すには、何よりあいみょんとバンドメンバーの居心地のいい繋がりがあってこそだろう。その「ま・あ・る」というテーマは、バンドの音とあいみょんの歌声に存分に表現されていた。互いにわかり合えているという空気感の中で放たれるあいみょんの歌が、実に伸び伸びと気持ちよさそうに響いていた。アリーナクラスの大きな会場での緊張感も、あいみょんはしっかり楽しめているのがわかるし、どれほど広い会場で、どれほど多くのオーディエンスを前にしても、そこにいる「一人ひとり」と、これほど見事にコミュニケーションできるアーティストもほかにいないと思う。あいみょんのライブを観ていると、アリーナのスタンド席にいても、まるで親しい友達の家に招待されたような、そこで素敵な音楽を聴いて楽しいおしゃべりをしているような、そんな幸せな気分になる。ライブ演出のためだとか、ファンサービスというより、あいみょん自身がそのコミュニケーションを心底楽しんでいるのがわかるし、だからこそ、どんなに大きな会場だとしても、たとえひとりで観に来ていたとしても、誰ひとり、置いていかれることはない。今回のツアーは特にそれを強く感じた。まさに「ま・あ・る」の世界が体現されている。ほんとにちょっと、あいみょんにしか成し得ない親密さではないか。それでいて、演奏や歌にはどこか孤高の気高さや研ぎ澄まされたミュージシャンシップが感じられるし、いやたぶん、今回のライブは最強のパフォーマンス。7月1日、東京公演の初日、国立代々木競技場 第一体育館でのライブを観ていて、ずっと口角があがりっぱなしだった。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年9月号より抜粋)