「ONE OK ROCKは映画『るろうに剣心』と共に歩んで来ました。そして、今回も全力で主題歌を書き下ろさせていただきました。この映画が日本の映画界に生き続けると同時に、我々ONE OK ROCKも更なる進化を目指して突き進んでいきたいと思います」
新曲“Renegades”が映画『るろうに剣心 最終章 The Final』の主題歌として発表された際、Takaはそんなコメントを寄せていた。2012年第一作『るろうに剣心』の“The Beginning”。2014年に連続して公開された第二作『京都大火編』の“Mighty Long Fall”、さらに第三作『伝説の最期編』の“Heartache”……ONE OK ROCKが手掛けてきた映画『るろうに剣心』の主題歌ラインナップはそのまま、未知の音楽の地平を目指して己のロックを進化させ続けたONE OK ROCKの闘いの軌跡そのものでもあった。
そして――同シリーズの集大成を飾る『最終章 The Final』『最終章 The Beginning』が、コロナ禍による延期を経て2021年ついに公開決定。その『最終章 The Final』主題歌として制作した楽曲に、ONE OK ROCKは“Renegades”(反逆者)のタイトルを与えた。そして、そのコラボレーターとして彼らが選んだのは、英国のみならず世界を代表するシンガーソングライター=エド・シーランだった。
「Ed Sheeran DIVIDE WORLD TOUR 2019」のアジア公演でONE OK ROCKがサポートアクトを務め、後に「“EYE OF THE STORM” JAPAN TOUR」で今度はエドがサプライズゲストとして登場、といった具合に国境を越えた盟友関係を築いている両者が、イギリス郊外にあるエドのホームスタジオで共同制作を敢行。お互いの信頼感が生んだ新たな音楽のケミストリーが、ONE OK ROCKの新次元を指し示す楽曲として結晶するに至った。
物憂げなリズムとアコースティックギターのループという、今や世界のスタンダードとなったエドお馴染みのアレンジに乗せて歌われる、《I've lost my faith in this broken system(この壊れたシステムには失望した)》、《We're the forgotten generation(忘れられた世代)》といったシリアスな現状認識。ベッドルームの灰色の憂鬱に寄り添うような音像が、Taka渾身の《I'm not afraid》の歌とともに一転、聴く者すべてをスタジアム級のロックの絶景へと誘ってみせる。
あらゆるネガティビティを振り落とす爆走ビートの狂騒感に身を委ねるのではなく、BPM77〜78ほどの雄大なリズム感とともに、闇も絶望もすべて抱き止めるかの如き不屈の挑戦精神を描き出す――。アルバム『Eye of the Storm』以来約2年ぶりの新作となる“Renegades”が立ち昇らせてくるのは、自分自身の手で存在証明を打ち立てながら前へ進むことこそが「今を生きる意味」に他ならない、というダイレクトで根元的な、そして実はいつの時代も最も実現困難でもあるシビアなテーマと対峙した、超弩級のシュプレヒコールである。この楽曲に織り込まれた力強いコーラスのパートは、大規模ライブなき時代から「かつて当たり前にあったライブの熱狂」を回顧するノスタルジーの産物ではなく、閉塞感の「その先」に前人未到のロックの高揚感とカタルシスを打ち立てようとするバイタリティの証として、ひときわ熱く、強く胸に響いてくる。最高だ。
《すり込まれ 塗り重ねられた/嘘は僕らを飲み込んだ/We gotta fight for our rights and the things we love now(権利のために闘え 愛するもののため)》(“Renegades”)
ライブ活動もままならなかった昨年、ONE OK ROCKは幕張・ZOZOマリンスタジアムから届けた無観客オンラインライブで「スタジアムすべてが舞台」という圧巻のアクトを通して、日本全国のみならず世界中を「ONE OK ROCKのステージ」に変えるハイエナジーな熱演を繰り広げていた。そこで初披露されていた未発表曲“Wonder”、そして今回の“Renegades”の2曲はいずれも、2020年代という時代に「ロックバンドにしか鳴らし得ない強度とダイナミズム」の在り処を厳然と、しかも鮮烈に伝えるものだ。ONE OK ROCKの終わりなき革新がさらなる新章を迎えつつある――そんな予感に満ちた1曲であることは間違いない。(高橋智樹)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年6月号より)
掲載号の購入はこちらから