【JAPAN最新号】MY FIRST STORY、自らの変革を経て、次なる高みへ――。挑戦のアルバム『V』、そして今、目に映る景色を語る

【JAPAN最新号】MY FIRST STORY、自らの変革を経て、次なる高みへ――。挑戦のアルバム『V』、そして今、目に映る景色を語る

前回は自分の中でのこだわりを捨てて、今回はマイファスとしてのこだわりを捨てた。
バンドの見え方を、一回自分たちの固定概念から外してみようって

現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』9月号にMY FIRST STORY・Hiroが登場!

自らの変革を経て、次なる高みへ――。
挑戦のアルバム『V』、そして今、目に映る景色を語る

インタビュー=小栁大輔 撮影=CHITO(THE OCTOPUS)


これは大変化作ということになるのだろう。

MY FIRST STORY、1年10ヶ月ぶり、6枚目のアルバム『V』は、楽曲の方向性から、歌詞に刻まれた思い、Hiro自身のパフォーマンス、そして、バンドの見え方までも抜本的に変化させるほどの挑戦作になった。多様的で、どこか抜けがよく、明るささえ感じられるアルバムである。

作り手が音楽を心の底から楽しんでいるような、そんな軽やかなHiroの表情すら浮かんでくる。硬質なサウンドで塗り固めた、鮮烈な孤独を叫び続けてきたあの鎧を脱ぎ、Hiro自身が自らの音楽家としての才能を解放してみせた、とても大切な作品だと思う。

Hiroはほかのどんなアーティストよりも――いやあえて言うなら、ほかのどんな「ボーカリスト」よりも、「音楽をやる理由」に向き合ってきた人間である。その「理由」に向き合う以上、彼がやる音楽は「ロック」でなければならなかったし、「バンド」でなければならなかったし、そしてもちろん彼は「歌」わなくてはならなかった。だから、彼の言葉はいつも他の誰かを強烈に意識したものだったし、その歌はいつもはっきりと苛立っているような、まるで何かに悲しんでいるような、やるせなさをぶつけ続けているかのような、どこか脆く危ういものだった。そうやって、ただ前に突き進むしかない物語を生きてきた彼は、やがて日本武道館公演をやり、さいたまスーパーアリーナを満員のオーディエンスで見事に埋め、かねてから「約束」の場所だと宣言してきたドームライブを狙える高みにまで上り詰めてきた。

そこで生まれたのがこの、一大「ポップアルバム」としての『V』である。

正直驚きもあったし、いくつものクエスチョンマークが脳内を駆け巡りもした。だが、取材現場に現れたHiroは、どこか爽やかさすら漂わせているような、以前のひりついた彼とはまったく違う、穏やかで落ち着いた空気をまとったHiroだった。僕の言葉で言うならば、怒りや苛立ちを支えに、ギリギリの心境で立っていたHiroが本当の意味で、「自立」したような印象を受けた。Hiroからは「親かよ!」と突っ込まれてしまうくらい勝手な話だが、その変化を僕はどこか嬉しく思った。この人間としての変化が、この素晴らしいポップ作品『V』を作らせたのだと思ったし、彼が音楽をやる理由は、今、本当に「自分のため」になったんだなと思えたからだ。MY FIRST STORYというバンドは、ここからいよいよ、彼らの夢を叶えるための物語を、そのバンド名が示すピュアな物語を生きていくことができる。

アルバムを聴けばみな驚くだろう。その驚きへの回答が、このインタビューではしっかりと語られ、そして、今その胸中に刻んだ確かな自信と眩しいほどの未来像が語られている。Hiroは今、ほかの誰でもない、Hiro自身を語り、そうすることで、過去の呪縛から解放されながら、日々を生きている。(小栁大輔)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年9月号より抜粋)


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【JAPAN最新号】MY FIRST STORY、自らの変革を経て、次なる高みへ――。挑戦のアルバム『V』、そして今、目に映る景色を語る - 『ROCKIN'ON JAPAN』2020年9月号『ROCKIN'ON JAPAN』2020年9月号
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