現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』9月号に米津玄師が登場!もしかしたら順調に
順風満帆にやってるように見えるのかもしれないんですけど、
やっぱ水面下はすごく、足がバタバタしてるというか。
ものすごく深く沈み込んで考える瞬間は
たぶん今までの中で、いちばん多かったんじゃないかな
ニューアルバム『STRAY SHEEP』のすべてを語る
期待を遥かに超える圧倒的な傑作。それはいかにして生まれたのか、そのすべてを解き明かす超ロングインタビュー
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=Taro Mizutani
約2年前、シングル“Lemon”で米津玄師は桁外れのブレイクを果たしたが、そこから初めてのアルバムとなる。
“Lemon”以降さらに放った大ヒットシングルの数々──“Flamingo”“TEENAGE RIOT””海の幽霊“”馬と鹿“もすべて収録され、あの”パプリカ“のセルフカバーも、”まちがいさがし“のセルフカバーも収録されている。
さらにドラマ『MIU404』主題歌“感電”、野田洋次郎とのコラボ曲“PLACEBO + 野田洋次郎”も収録されている。
それらの視聴回数をトータルにすれば十何億回を超えるのかもうわからないが、このアルバムが今年の日本の音楽シーンにおいて最も待たれている作品であることは言うまでもない。
そして普通なら、これ以上ないほどに自信に満ちて堂々とした王道ポップアルバムとして仕上がっても何らおかしくはない。
だが、今作のアルバムタイトルは『STRAY SHEEP』である。「迷える羊」だ。
ジャケットのイラストに描かれた人物は、羊の頭蓋骨を被り、うつむいている。
ひとりの迷える羊として、彷徨い苦悩しながら作り上げた、ヒリヒリするような震える魂のアルバムであることを、このタイトルとジャケットは物語っている。
米津玄師は、このアルバムがヒットシングルに満ちた待望のポップアルバムであることも踏まえたうえで、あえて表現者としてその先にあるもう一つの美しい目的地を探したのだ。
それがアルバム『STRAY SHEEP』として完結した。
その経緯のすべてがこのインタビューで語られている。
「遠くへ行け」と自分に向かって叫び続けてきた米津玄師は、誰もたどり着けないほどの頂点へとたどり着き、そこで何を見たのか。
アルバム制作の混乱と、世を襲ったコロナ禍の混乱に取り囲まれてそこで何を思ったのか。
それらすべてが語られている。
ヒットシングルもセルフカバー曲もコラボ曲も新曲もすべて関係なく、どの曲も一曲一曲それぞれに深いテーマがあり、磨き抜かれたメロディがあり、ラディカルなアレンジ、ハイレベルな演奏技術があり、そして圧倒的な米津玄師の歌によって全曲がアルバムのクライマックスと化している。
直球の1曲目“カムパネルラ”も、不条理でダークなファンタジー“迷える羊”も、残酷さと悲しみをひたすら美しく昇華する”優しい人“も、それぞれの場所から美しさを放ち、感覚と感情が揺さぶられて止まない。
そして、最後の曲“カナリヤ”では、これまで米津玄師が決してたどり着けなかった、あまりにも感動的な光景が描かれる。
迷い、混乱しながら、でも一切の妥協を許さずに掴み取った答えが、この曲からははっきりと伝わってくる。
迷える羊のままでこれほど確かなポップミュージックを作り上げた米津玄師の才能は、本当に計り知れない。(総編集長・山崎洋一郎)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年9月号より抜粋)
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