現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号、別冊に宮本浩次登場!自分をすべて整理するという意味でのカバーアルバム。
そんな覚悟でカバーしたし、こんなに楽しいカバーの時間はなかった
歌手・宮本浩次としての真価を証明する傑作カバーアルバム『ROMANCE』完成。
オリジナル曲への思い、歌手としての挑戦と青春、そのすべてを語るロングインタビュー
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=Maciej Kucia
全12曲、小坂明子“あなた“から宇多田ヒカル“First Love”まで、70年代、80年代、そして90年代の女性歌手による歌謡曲を宮本浩次が歌った初のカバーアルバム、『ROMANCE』。
ただし、これはただのカバーアルバムではない。
企画商品でも異種の作品でもなく、これはソロ・宮本浩次のひとつの目的地であり、偉大な到達点ですらある。
椎名林檎とのコラボ、東京スカパラダイスオーケストラとのコラボから始まったソロ・宮本浩次は、そもそもにおいて宮本が歌手としての本来的な力と自由な表現を発展させることが大きなテーマだった。
自作の曲であっても演歌やラップや歌謡曲やパンクといった、ロックバンド・エレファントカシマシとは違う方向性のものが多く、それをいかに自由に奔放に歌いきるかがソロ・宮本浩次の真骨頂であり、ファーストアルバム『宮本、独歩。』のコンセプトだった。
そう考えるなら、音楽的に大きく花開いた70年代、80年代の歌謡曲を歌手・宮本浩次として歌い、フルアルバムとして完成させるのは、デビューアルバムの次に挑むべき作品として実に王道だ。
つまり、全12曲の最強の歌謡曲とのコラボ、宮本の言葉を借りるならば「(曲に)稽古をつけられている」、それがこのアルバム『ROMANCE』なのだ。
それと同時に、このアルバムは宮本が自分が生きてきた半生の記憶とリアルに向き合い、昭和という時代の記憶ともリアルに向き合い、そこで感じ取った情感を歌の中に溶かし込むという極めて文学的な作業によって生まれた作品でももちろんある。
懐かしさや感傷ではなく、それぞれの楽曲と、歌と、時代背景が織りなす大きな感動に聴き手は揺さぶられる。
この名盤の誕生を祝したく、『ROMANCE』STORYと題して小冊子の形にしました。
じっくりと読んでください。(総編集長 山崎洋一郎)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年12月号より抜粋)