今の世の中はいろんな情報にすぐアクセスできてしまうから、便利な半面、すぐに刺激を求めてしまいがち。でも毎日SNS映えするようなドラマチックな1日を過ごしている人なんていなくて、なんでもない日常は残念ながら誰にでも訪れるもの。自分は足りてないって思うばっかりになるのはもったいない。自分が持ってるものに心をゆだねる時間があってもいい
ここ最近のマルシィからは、嬉しかったことや悲しかったことだけではなく、取るに足らない1日にも寄り添える楽曲を届けたいという意志を強く感じる。そんな思いをぎゅっと凝縮させた作品が最新アルバム『Flavors』だ。マルシィが得意とする恋愛ソングも、歌詞に描かれているような感情をリアルタイムで抱いている人の共感を集めるだけの曲ではない。過去の記憶を呼び起こして懐かしい気持ちに浸れたり、たとえ経験したことがなかったとしてもひとつの短編小説のように楽曲を物語として楽しむことができたり、どんな角度からも受け取ることができる歌に進化している。さらに、“holiday”のように恋愛だけにフォーカスしない、ささやかな暮らしを優しく肯定する名曲も誕生した。
王道のポップソングはともすればシーンの中で埋もれかねないけれど、マルシィはむしろ王道であることによって、どんな日常にも寄り添いたいという信念をより色濃く表すことができる非凡なバンドだ。そんな彼らが生み出した自信作『Flavors』について3人に語ってもらった。そして、次号は吉田右京が半生を語る2万字インタビューを敢行するのでお見逃しなく!
インタビュー=有本早季 撮影=北岡稔章
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年12月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』12月号のご購入はこちら
*書店にてお取り寄せいただくことも可能です。
ネット書店に在庫がない場合は、お近くの書店までお問い合わせください。