現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』10月号にyamaが登場!歌う時は自分の歌にはしたくないんですよ。自分の歌だと思いたくないんでしょうね。
自分のことをあんまり知られたくないんですよね。たぶん、自分のことがいまだにあんまり好きじゃない
yama 2万字インタビュー
「歌い始めた理由、歌い続ける理由」
インタビュー=小栁大輔 撮影=神藤剛
yamaというシンガーのすごさについて、しつこく何度も訊かせてもらった2万字インタビューである。そもそもは2018年から歌い手として活動を始めたyamaだが、昨年4月に配信された“春を告げる”が1億回再生という巨大なヒットとなったことで、一気にオーバーグラウンドな存在になった。その後も、“クリーム”“真っ白”“麻痺”など、出す曲出す曲がバイラルヒットになり、その都度、ドラマチックなメロディを涼しく歌い上げてみせる図抜けたスキルに感動させられてきたが、その振れ幅豊かな曲たちを聴いていてふと思うところがあった。yamaの楽曲の多くを書いているのは、くじらやTOOBOEなど名うてのボカロPたちだが、彼らがこれでもかと描き込む情景豊かな曲たちが、この人の声で歌われると、どこかその景色を漂白されたような、それこそ真っ白な紙に書かれた端正なデッサンのような、すっと背筋が伸びるような凛とした美しさを帯びていく。歌のうまさ、という概念を超えた「聴かせる」魅力というか、すっと聴き手の生活に溶け込んでいくしなやかな存在の仕方というか、このあまりに繊細で、どこか潔癖なまでの歌は、現時点において、どうあってもyamaの声でしか表現されないものなのではないか――僕にはそんなふうに思えて仕方なくなってしまった。
今回2万字インタビューをオファーさせてもらったのは、そんな強固な前提があったからだ。初のアルバム『the meaning of life』も徹底して素晴らしい、見事なポップソング集になっている。2021年を象徴をする1枚だと思う。yamaに初めて話を訊かせてもらった。このミステリアスなシンガーは、今求められる「歌」とは何かという真理にまでリーチする、本質的な話を訊かせてくれた。(小栁大輔)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年10月号より抜粋)