時代の変化を直視させられるインタビューだった。“全方向美少女”をスマッシュヒットさせている乃紫がJAPAN初取材で語ってくれた言葉たちは、ポップミュージックについて考えるうえで重要な証言である。いつの時代も音楽とリスナーの媒介となるものによってポップミュージックの作り方は変わってきたが、乃紫の語りは、令和6年の今、新しいものが生まれていることを決定付ける。
「サビだけ投稿して反応がよければフル尺を作る」「コメントから曲を作る」などはここ最近増えてきた手法であるけれど、乃紫はやり抜いている。現代人の愚痴や欲望が渦巻いているのはTikTokやSNSだからこそ、その場から大衆の思想を徹底的に掘り起こしている。すべては、今を生きる大衆の耳をキャッチし、大衆の心情を歌う、ポップミュージックを作るために。ポップアーティストとして駆け上がる覚悟のある、肝っ玉が据わっている人だと思った。でも繊細な部分も隠し持っている。乃紫の才気に目が眩む。
インタビュー=矢島由佳子 撮影=武井宏員
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年4月号より抜粋)
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【JAPAN最新号】“全方向美少女”とはなんなのか。「乃紫」とは何者なのか。ポップス最前線に躍り出た、その正体を暴く初インタビュー
2024.02.29 12:00