2019年6月16日、Sleepless in Japan Tourファイナル――4人で鳴らした最後の夜と、ロックバンドという奇跡について
文=小川智宏
なんというか、つくづくかっこいいロックバンドだなあと思って、ため息が出た。我ながらバカみたいな感想だし、ファンからすればそんなこと紀元前から知ってるわという感じだろう。自分でもそう思う。でも、「かっこいいロックを鳴らす」ということが、ある意味で[Alexandros]の存在証明と本質そのものであり、何をおいてもまず「かっこいいロックを鳴らす」ために、この4人はすべての選択と決断をしてきた、逆にいえばそれ以外のことを徹底的に遠ざけてきた、それゆえ彼らはこれからもっとかっこよくなっていくに違いない――そのことを、さいたまスーパーアリーナでの一大ロックスペクタクルの映像を観て改めて思ったのだ。
とはいえ……自分で書いておいてなんだが、「かっこいい」とはずいぶんふわっとした言葉だ。では[Alexandros]にとっての「かっこいい」とは何か。全身サンローランの衣装で固めたロックスターが、スポットライトを浴びながらギターを弾き、叫び、歌う。固い絆で結ばれたバンドがそれを支え、鼓舞し、もり立てる。そしてその光景を万単位のオーディエンスが憧れと興奮をもって見つめる。絵に描いたようなロックバンドの晴れ舞台、いや、「晴れ舞台」というよりもそれがロックバンドの必然的な「日常」であるということ。そしてその「日常」を続けるだけだという強烈な意志。[Alexandros]にとってはそれが「かっこいい」の中身だ。それを手に入れ、体現し続けるために彼らは走ってきて、ここにたどり着いた。《私がいなくたって/この音が終わったって/あなたの呼吸は続いてく》――いみじくも“Girl A”で歌っているとおり、バンド自身の物語すら置き去りにするようなロックバンドとしての正義。4月1日にリリースされた映像作品『Sleepless in Japan Tour -Final-』に記録されているのは、それ以外の何物でもない。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年6月号より抜粋)
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