【連載】東京事変、全フルアルバム&EP「全部のせ」レビュー――第2回『スポーツ』『大発見』『color bars』

【連載】東京事変、全フルアルバム&EP「全部のせ」レビュー――第2回『スポーツ』『大発見』『color bars』

2004―2021
祝!オールタイム・ベストアルバム『総合』発売
東京事変、全フルアルバム&EP「全部のせ」レビュー

衝撃のデビューシングル“群青日和”を収録した1stアルバム『教育』から、2012年の解散と2020年の「再生」に至るまでの8年間を経ての最新作『音楽』まで。17年間の軌跡をひもとく全アルバムディスコグラフィー第2回!


『スポーツ』(2010年)

【連載】東京事変、全フルアルバム&EP「全部のせ」レビュー――第2回『スポーツ』『大発見』『color bars』

バンドの理想と喜びそのもの

メンバー各々が日本代表級の才気を備えた音の精鋭5人が描き出す、ポップの流線型の如き艶やかなバンドアンサンブル。しかし、そのサウンドの高揚感の正体は、研ぎ澄ませた真剣を丹念に組み合わせたかのような美しさと凄味にこそある――という東京事変の構造論を象徴している4thアルバム。
ゴスペルとシャッフルビートが共存する“生きる”でドラマチックに幕を開ける今作。ハイブリッドなディスコファンクの躍動感と妖気を、3分間ジャストの尺に結晶させた“能動的三分間”。いつになくハードにうねる浮雲のギターサウンドが、電子音のシーケンスとせめぎ合いながら高まる“電波通信”。鳴り響く場所すべてをドライブさせるような、5人一丸の凜とした疾走感に満ちた“閃光少女”。“FOUL”に凝縮されたカオスと開放感、“勝ち戦”に複層的に織り込まれたポップとブルース……。椎名林檎が全曲の作曲を他メンバーに委ねた前作『娯楽』を経て、5人の音楽的シナプスが、よりいっそう高密度で絡み合っていることを、今作の融通無碍な音像は明快に物語っている。バンドで音を作り奏でることの理想と喜びそのもののような名盤である。(高橋智樹)

『大発見』(2011年)

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現実の一大事の中で発揮された力

メンバー個々/バンド単位でのストイックかつチャレンジングな創作姿勢に裏付けられた前作『スポーツ』から、1年4ヶ月というスパンでリリース。ポップの側面から見ても東京事変の総合力が遥かな高みに達したアルバムであり、数々のCMタイアップ曲やドラマ主題歌“天国へようこそ”のアルバムバージョンなど、当時のカルチャーを支えた楽曲も多い。アルバムタイトルはディスカバリーチャンネルになぞらえた意図もあるのだが、東日本大震災という理不尽な破壊が起きたあとに、パワフルなクリエイティビティで対抗しようとする意志が感じられたのを思い出す。また、《ああ僕ら生きているよ密かに/そう声を押し殺した都市に隠れて》と歌われる“電気のない都市”は、計画停電が行われた時の不安や心細さを掬い上げている。アバンギャルドすれすれで巧みに音像を制御するロックチューンからクールなジャズ/ファンクまでを華麗に乗りこなし、終盤も右肩上がりのエネルギーを放ちながら実質的な本編ラスト“女の子は誰でも”までを駆け抜ける。全方位的に鍛え上げられた音楽が社会を励ましたという点で、第2期東京事変のピークを刻むアルバムだ。(小池宏和)

『color bars』(2012)

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剥き出しの「主張と尊重」という骨組

とにかく楽しい一枚、以上!と、カラッと書き上げたいところだけれど、リリースされた当時はいろいろと想いを巡らせた。『大発見』で、名実共にスケール感を極めてからの、解散発表。そしてリリースされた、メンバーそれぞれが作詞作曲した5曲が収録された今作。改めて、☆の形みたいに尖がってて、それぞれの方向を見ている5人が、音楽で繋がって、星のような輝きを生み出してきた、東京事変は奇跡だったんだな。その事実を突きつけられた気がした。聴けば解散を納得せざるを得なかったし、あの最中にこのような作品をリリースした東京事変は、本当に誠実なバンドだと思う。
そして、周知のとおり、「再生」というさらなる奇跡が起きた。そんな今となっては、ただただ楽しんでいい一枚だと思う。誰が歌っても、どんな音色が鳴っていても、作詞作曲者のイメージが具現化されていれば良し。ただ、五人五様が際立っているようで、絶妙な押し引きからは、お互いに対する尊重が見えてきて、逆にバンド感が聴こえてくると思うのは、私だけだろうか。本当に「今となっては」な発見だけれど、東京事変が「再生」した理由も今作に潜んでいるように思う。(高橋美穂)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年1月号より)

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【JAPAN最新号】東京事変、メンバー全員集合、全歴史『総合』インタビュー、一世一代の全部のせ!!!!!
考えられないですよ、東京事変がない状態って。 抗えなかった。避ける道がなかったと思います(椎名) 現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』1月号表紙巻頭に東京事変が登場! 9年9ヶ月ぶりの表紙巻頭。 メンバー全員集合、全歴史『総合』インタビュー、一世一代の全部のせ!!…
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JAPAN最新号 表紙は東京事変! 別冊クリープハイプ/BUMP OF CHICKEN/宮本浩次/[Alexandros]/あいみょん/MWAM/sumika/RADWIMPS
11月30日(火)に発売する『ROCKIN’ON JAPAN』1月号の表紙とラインナップを公開しました。今月号の表紙巻頭は、東京事変です。 そのほかラインナップは以下のとおり。 ●東京事変 9年9ヶ月ぶりの表紙巻頭。メンバー全員集合、全歴史『総合』インタビュー、一世一代の全部のせ…
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