メニュー
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る



いちばん日の高い時間帯にもかかわらず、穏やかな風がテント内を吹き抜けて、例年にないすごしやすさのWING TENT。この爽やかさにぴったりなのが、続いて登場するふくろうずの3人だ。しかも全員がボーダールックという、輪をかけた爽やかぶり。「電話が苦手な女の子の曲、“テレフォン No.1”!」。内田万里(Vo&Key)の掛け声とともに、電話のベルがけたたましく鳴り響いて、ふくろうずの、極上ポップ・ショーが幕を開ける。

7月にリリースされたばかりのアルバム『テレフォン No.1』のタイトル曲でもあるこちらは、ソウルやファンクのエッセンスも注入された、キュートな60'S風ポップ。横乗りのグルーヴに、内田の歌う、キャッチーでカラフルなメロディがリズミカルにのり、ちょっぴりヘンテコな石井竜太(G)のギターが絡むと、サウンドはどんどんマジカルに変化していく。カレイドスコープ的ポップ・チューンに、会場がどんどんと染まっていく。

「わたしたち、ふくろうずで~す。イエイ!」。ハイテンションなのか、脱力気味なのか、不思議な雰囲気の内田の自己紹介とともに、疾走感たっぷりで、“もんしろ”がはばたく。螺旋状のメロディで上昇していく抜けが、心地いい。そして、安西卓丸(Ba&Vo)との男女ヴォーカルで、ふたつの旋律を生みだすような摩訶不思議な魅力にあふれた“トゥーファー”へ。その裏で、むちゃくちゃロッキンなギターを弾きまくる石井の存在感も際立っていて、この3人(ドラマーはサポート)のバランスの面白さを改めて実感。それぞれひと癖あって、一見、デコボコな感じがするけれど、組み合わさった時の魔法がある。そして、このバンドでしか生み出せないような、濃厚なポップ世界へと、オーディエンスを引き連れてずんずんと進んで行く。

「みなさん夏休みの方も多いと思うんですけど。むかしから、夏休み明けに女の子の雰囲気が妙に変わってるみたいなことがありますよね――」と安西が切りだす。そして夏に韓国旅行に行った子が、二重になって帰ってきたというエピソードを淡々と披露。「夏休みはなんでもありですね。じゃ、やりますか?」(安西)、「やりましょう」(内田)。なんだ、この妙なグルーヴは……。

こんなオチのない話のあとに、インディー時代の名曲“ごめんね”へ。男女ヴォーカルでの切なさの二重奏が、夏の風に沁みる。「今日ここに出ると決まった時、ものすごく暑いから覚悟しておけよって言われたので、メンバーに隠れて走ったりしてたんですけど、全然暑くなくて、びっくりしてます(笑)。今はお昼だけど、夏の歌を歌いたいと思います。“カシオペア”」(内田)。

星空のミラーボールに踊る切ないダンス・ミュージック“カシオペア”から、石井がギターの弦をひきちぎらんばかりにかきむしり、“砂漠の流刑地”へと流れる。制御できない心の叫びをそのままデッサンしたようなメロディ、そして、叫び、途方に暮れ、そしてまた走り出すような、激変する感情をトレースした石井のアグレッシヴなギター・プレイの引力に、オーディエンスがどんどん吸い込まれていく。絶妙なアンサンブルによるマジカルなポップスから、フリーキーな、「ザ・ギタリスト」がサウンドの舵を握るロックンロールへと、ほんとうにとんでもないところまで連れて行かれた真夏の白昼夢だった。(吉羽さおり)






この3日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」は9月上旬発売予定です! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

【ふくろうず】過去の ROCK IN JAPAN FESTIVAL クイックレポート