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楽しい時間が過ぎるのは早いとは言うけれど、日はとっぷりと暮れて初日SOUND OF FORESTのアンカーを迎える時間になってしまった。清水依与吏(Vo/G)、小島和也(Ba/Cho)、栗原寿(Dr)の3人にサポート・メンバーを含め総勢6名のバンドが、いきなりの歌い出しから“半透明人間”の強烈にアップリフティングで狂おしいダンス・ロックを振り回し、一気にオーディエンスとの距離を縮めてゆく。切なさを抱え込みながらも全力で命を燃やすと言う点では、続く目下の最新シングル曲“高嶺の花子さん”も同様だろう。切なさもやるせなさもそのままに、人は踊ることが出来るし笑うことも出来る。視界に収まらないほどの人々を一斉に乗せてひた走る、この音楽の、歌の力はどうだ。

《そして今度は/目の前の人を幸せにしよう/それだけでどんな過去も/救えるんだ》。そう歌われる“平日のブルース”を経て、興奮まかせに叫び声を上げた清水は、「この8月2日も終わりの方の時間を、一緒に過ごせて嬉しいです。大して気の利くメンバーじゃないし、エスコートも出来ないし、派手な演出も無いけど、俺たちなりに楽しみにしてきたので、みんなも楽しんでいって」と飾り気の無い真っすぐな言葉を投げ掛け、そしてこれまた豪奢でもなく気取りもしないが最高に美しい“花束”を贈ってくれる。続いて“stay with me”で想いの深部へと触れる者を引き込み、照明以上の眩いサウンドを放ちながら“はなびら”へと繋げるのだった。過去は変えることが出来ないという事実を反動に、back numberの名曲たちは生まれ落ちて熱を帯び、輝く。

「SOUND OF FORESTってだけあって、カナブンが飛んでくるんだね」と笑いを誘いつつ、“青い春”プレイする前に清水は、「本当に、最後にここに来てくれてありがとう。絶対、後悔させないからさ。来年か、再来年! ここにいるみんな、GRASS STAGEで会いましょう!!」と告げていた。最後に披露された“スーパースターになったら”を耳にするとき、僕はいつも、なんて無防備で、ひたむきなバンドなんだろうと思う。その無防備なひたむきさこそが、間違いなく彼らの推進力なのだ。特大のシンガロングを巻き起こしたback numberのメンバーが立ち去った後、当然沸き上がるのはアンコールの催促だ。

ステージに戻って来た清水は「先日、俺が初めて曲を書くきっかけになった、A子ちゃんって子が、結婚するらしくて。多くは語りません、この曲に全部入ってます!」と“そのドレスちょっと待った”を叩き付ける。「しっかりした子なんで、しっかりした人を見つけたんだと思います! 自分の書いた歌詞があとでこんなにピッタリくるなんて思いませんでした!」と演奏中にも語っていた。まったく、世の中は、歌うべき事柄でまだまだ溢れている。かつての清水がその歌を生んだことにも、おめでとうと言いたい。(小池宏和)




この3日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」は9月上旬発売予定です! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。
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【back number】過去の ROCK IN JAPAN FESTIVAL クイックレポート