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初日GRASS STAGEもいよいよ最後のアクト。すっかり陽の落ちたフィールドに青白く浮かび上がる舞台に、サカナクションの5人が意気揚々とオン・ステージ。過去3回のROCK IN JAPAN FESTIVAL出演のうち、2011年のGRASS STAGEでは昼間の時間帯の登場だったが、やはり闇の底から光を求めるサカナクションの音楽には夜がよく似合う――と、2009年(SOUND OF FOREST)&2010年(LAKE STAGE)出演時の夜のステージを思い返しながら夢想していたのが、ついに今こうして現実となる。しかもこのROCK IN JAPAN FESTIVAL最大のステージで。

まずはステージ前列にラップトップ5台並べて、全員DJスタイルのエレクトロ編成でスタート。夜の冷気を硬質なビートがかき混ぜ、さっきまでのRIP SLYMEのダンス開放区的な熱狂空間とはまるで異なる、巨大な屋外クラブ・ミュージック空間が生まれていく。そこに“ミュージック”の山口一郎の物憂げな旋律が加わり、ハイパーなサウンドスケープが刻一刻と肉体性を帯び――舞台暗転の間にバンド・セットに切り替わった瞬間、歓喜に歌い跳ね踊り回るオーディエンスがGRASS STAGEをでっかく揺らす! そして、高らかに響き渡るパーカッション・サウンドと「ROCK IN JAPAN FES.2013!」と呼びかける山口のコールからそのまま“アイデンティティ”へ! 《アイデンティティがない 生まれない らららら》という辛辣な言葉が、数万人のシンガロングによって鮮やかにネガポジ変換され、どこまでもエモーショナルなキラー・フレーズとして身体に、心に染み渡っていく。

最新アルバム『sakanaction』を引っ提げて回ったツアーでは、今年5月の「6.1chサラウンド」を駆使しての幕張&大阪公演を含め、さらなるサウンド・イノベーターぶりを見せつけたサカナクション。もちろん、この日のGRASS STAGEにはサラウンド・システムこそないものの、野外の巨大な会場ならではのノー・リミットなスケール感が、江島啓一のドラムに、草刈愛美のベースに、岡崎英美のシンセ・サウンドに、岩寺基晴のギターに、そして山口の歌に、途方もない躍動感を与えているのがわかる。ハード・テクノ的なリミックス・トラックも交えながら、ほぼノンストップ・ミックス状態で本編を構成していた5人。夜の闇をソリッドなビートとレーザー光線で貫いてみせたかと思えば、GRASS STAGEに緑色のレーザーの雪を降らせてみせたり、ステージ背後のヴィジョンまで一体となった総合的なアートフォームを描き出していた。極限まで突き詰められたアートとしての先鋭性を、数万人をダンス天国へ導くだけの訴求力を持ったエンタテインメントとして昇華させるバンドは、やはりサカナクションくらいだろう。

「みんな、まだまだ踊れる?」の山口の言葉とともに、舞台には振り袖姿の踊り子2人が登場! 曲はもちろん“夜の踊り子”だ。1日の終わりを踊り尽くそうとするオーディエンスの想いが、至上の祝祭感を生んでいく。すべての音が止み、舞台を去ったメンバーに、アンコールを求めてさらなる手拍子が降り注ぎ――再びステージに姿を現す5人。「まだまだ踊り足りないよね?」の山口の言葉に巻き起こった歓声が、“アルクアラウンド”のイントロでさらに熱を帯び、《嘆いて 嘆いて 僕らは今うねりの中を歩き回る》の一大シンガロングがフィールドを熱風のように吹き抜けていく。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013、1日目は最高のフィナーレを迎えた。ありがとうサカナクション!(高橋智樹)




この3日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」は9月上旬発売予定です! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。
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【サカナクション】過去の ROCK IN JAPAN FESTIVAL クイックレポート