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少し小雨もパラついたけれど、過ごしやすい気候に恵まれたこの初日SOUND OF FOREST、夕暮れの時間帯に登場するのは秦 基博である。本人含め5人編成の盤石なバンド・アンサンブルの中、木々をすり抜けて彼方まで届けとばかりに放たれる、“フォーエバーソング”の驚異的な声量と伸びやかなメロディー・ライン。両手を打ち鳴らす人、腕を振り体を揺らす人、じっとステージ上の秦を真っすぐに見つめて歌声を浴びる人、思い思いのスタイルで触れさせてくれるだけの懐の深さが、彼の表現にはある。「気持ちいいねえ、最後までよろしくー!」と今度はアコギを軽やかにカッティングし、ダンサブルな楽曲を牽引してゆく“ひとなつの経験”が、セクシーな手応えも絡めてこのシーズンにぴったりなときめきをフィールドに浮かべてゆく。

「ひたちなかー!!」と高らかな一声を放ち、心の弱さもそのまま躍動する言葉に乗せて瑞々しく解き放つ“グッバイ・アイザック”へ。《決定的な君だけのステップを 刻んでよ 踏み出してよ》と、音楽の力を100パーセント引き出したメッセージが届けられる。更には幻想的なキーボード・フレーズに導かれて溢れ出す“Girl”が、SOUND OF FORESTの辺り一面に恋の魔法をかけながら披露されるのだった。シングル曲含め、今年1月にリリースされたアルバム『Signed Pop』にも収められた近年の秦の成果が続けて届けられる。そして「到着したころかな、ちょっとパラっと来てたけど。え? 今も来てる? 来てない来てない(笑)。大丈夫、次は、晴れを願う曲だから」と言葉を投げ掛けてプレイするのは、目下の最新シングル曲“言ノ葉”だ。沸々とダイナミックに展開するナンバーが、空はもとより心まで晴れ渡れ、といった印象で歌われる。

さあ、ここで改めてバンド・メンバーを紹介しつつ見送り、ステージは秦のひとり舞台に。「まだ降ってる? でしょう! この後も楽しんでください。秦 基博でした」と瞬く間に辿り着いてしまった最後の1曲は、アコギ弾き語りによる“鱗(うろこ)”だ。バンド演奏に負けず劣らず、迫力の名演である。歌の力、音楽の力を信じきっている表現者ならではの、短いながらも素晴らしいライヴ体験をもたらしてくれた。満場の拍手を浴びながら、彼は感謝の言葉を残してステージを後にするのだった。(小池宏和)





この3日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」は9月上旬発売予定です! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。
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【秦 基博】過去の ROCK IN JAPAN FESTIVAL クイックレポート