昼頃までの晴天はどこへやら、会場付近に雨雲が迫って途端に空模様が怪しくなってきたここGRASS STAGE。そんな不穏な空気感すら轟音渦巻くカオスの楽園の原動力に変えてみせるのはやはりこのバンド、9mm Parabellum Bullet。いきなり最新シングル曲“Answer And Answer”をぶっ放して、広大なフィールド丸ごとロック爆心地へ叩き込んでみせる。かみじょうちひろ(Dr)のツーバスがGRASS STAGEを揺さぶり、滝善充(G)のギターが巨大な空間狭しとダイナミックに暴れ回る。中村和彦(B)のベースが大地を震わせるように響き、菅原卓郎(Vo/G)の絶唱がオーディエンスの情熱を片っ端から自然発火させていく――そのまま“The Revolutionary”、さらに“Discommunication”! スリリングな爆走感過積載状態の爆裂ダンス・ビートの中、「うしろー!」と呼びかける卓郎に数万人もの観客が一大シンガロングで応える。5年連続GRASS STAGE出演となる9mmだが、今回の9mmサウンドの爆発力と堂々たる存在感は、間違いなく今までのステージとは違う。“新しい光”のスラッシュ・ビートも、格段に強靭な推進力に満ちているのがわかる。
「去年より見晴らしがいいんじゃないか?」と、今年から向きの変わったGRASS STAGE上からぐるりとフィールドを見渡す卓郎。「GRASS STAGEにお集まりの、グラスホッパーのみなさん! どんどん飛び跳ねたりさ、叫び回ったりしてください!」というコールから突入したのはもちろん、6月にリリースした新作アルバム『Dawning』収録の“Grasshopper”! 何の飛び道具も必要としないストレートなロックンロール・ナンバーもこの上なくダイナミックに鳴らしてみせるあたり、9mmの「今」のポテンシャルを象徴している曲と言える。雄大なスケールで轟いた“The World”を経て、『Dawning』からもう1曲“黒い森の旅人”! 狂おしく胸を突き上げるイマジネーションが、至上のメロディとソリッドなアレンジに結晶したこの曲が、最高に情熱的な4人のプレイとともに鳴り渡り、フィールドの温度をがんがん上げていく。
「俺たち、今年で結成9周年になります! 今日もたくさんのバンドが、アーティストが出演してると思うんだけど、9周年をこんなに大事に祝ってるバンドって俺たちしかいないんじゃないかと(笑)」と卓郎。「10年前にサマソニでアジカンを観た時、ゴッチがMCで『フライヤーのスペルが間違ってアジアン・カンフー・ギャネレーションになってる』と言ってた話」とともに、同じ舞台でアジカンの前に出演することへの感慨を語った後、“ハートに火をつけて”からは怒濤の終盤! 情熱的なスカ・ビートが性急に絶頂めがけて疾駆し、GRASS STAGEいっぱいのシンガロングとともに極彩色のメロディが轟々と噴き上がる! ぴょんぴょん舞台を飛び跳ねながら爆音を振り撒く滝だけでなく、この日の4人は音もアクションも最高の躍動感に満ちている。“Black Market Blues”“Talking Machine”ででっかいクラップを巻き起こしながら地面を揺さぶり――というあたりで、いよいよGRASS STAGEに雨が降り始めた。「ありがとう。最後の曲です」という卓郎の言葉とともに轟かせたラスト・ナンバーは、『Dawning』のクロージング・ナンバーにして、9mm史上最も熾烈で、破壊的で、美しいナンバー“The Silence”! 美しいギターのコードが紅蓮の轟音となって燃え上がり、凄絶なビートと麗しのメロディが絡み合い、すべてを震撼させるドラマチックな終幕へ――。全方位的に充実しまくった9周年の9mmを存分に見せつけた、最高のアクトだった。(高橋智樹)
この3日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」は9月上旬発売予定です! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。
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