【知りたい】HEY-SMITHがパンクロックの新たな道を快走する理由

リリース日が近づくにつれ、どんどんたくさんの人を巻き込んで、じわじわとワクワクを高める「現象」を起こす作品は、そう多くはない。HEY-SMITHのニューアルバム『Life In The Sun』は、そんな貴重な作品だ。そのリリース日がいよいよ11月7日に迫っているわけで、ショップにGO!というタイミングだが、どうして今回そんな貴重な作品が生まれたのか?ということを考察するために、HEY-SMITHというバンドの本質と道のりを掘り下げてみたので、ぜひ読んでいただきたい。

2006年、大阪で結成されたHEY-SMITH。短くない歴史を持つバンドだが、ひとつひとつの活動でしっかりと足跡を残し、着実に前進してきて、今の彼らがあると思う。作品のリリースや、「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」の主催、海外でのライブなど……その勢いが目立ち始めたのは2010年以降だったが、2013年に筆者がインタビューした時「これくらいまでのことは想像できていたんですよ」と猪狩秀平(G・Vo)は言っていた。知的な確信犯のようでいて、バンドを動かすガソリンはピュアであり、猪狩は「ホーンが入っているのは、音色が好きだから。でも3ピースのバンドも好きだった」とも言っていた。いわゆるスカパンクやメロコアなどといったジャンルに位置付けられない彼らの音楽性は、そういった「好き」を飲み込む胃袋の大きさと、消化する能力の高さゆえに生まれたものなのだと思う。さらに言うと、ライブを観ていてもわかるが、HEY-SMITHには自己主張の強いメンバーが揃っている。それを、「個性の渋滞」ではなく「華やかなパフォーマンス」にして魅せることができているところも、彼らの強みだ。自分たちのあらゆる持ち物を前向きにしていく力が、彼らにはあるのだ。

階段をかけのぼっている最中といえる2015年にはメンバーチェンジもあったが、2016年のアルバム『STOP THE WAR』には、そこを乗り越えたという証明だけではなく、パンクバンドとしての鋭さと、今の自分たちのスケール感も封じ込めた。そこから「AIR JAM」に2016年・2018年と立て続けに出演したことも象徴しているように、さらに幅広い世代のバンドマンやキッズから厚い信頼を集めていった。

そして、待望の新作『Life In The Sun』。パンクシーンやライブハウスを飛び出した「現象」を起こしていることは前述のとおりだが、今作そのものは、肩に力が入ったような仕上がりではない。むしろ、彼らのピュアネス全開。猪狩が愛するカリフォルニア、海、夏、ライブハウス……あらゆるテーマが、まさに太陽の光のような音色と共に降り注いでくる。このタイミングで、こういったナチュラルなアルバムを出してくるところに、彼らの強さを感じる。また、そんな眩しさの中で、パンクロック、スカ、レゲエ、ロックンロール、ポップスなど、あらゆるジャンルが根をはっており、次世代に音楽をしっかりと伝えていこうとする意志も感じることができる。明るくてピュアで入り口が広い一方で、一人ひとりのキッズに深く刻まれる影響力もある――つまり、現代におけるパンクロック名盤だと私は思う。
次は、受け取ったあなたが、どう感じ、どう動き、どう生きていくかだ。さあ、ここまで長々と失礼しました。あとはショップにGO!して、思う存分聴きまくって欲しい。(高橋美穂)