【知りたい】2018年の音楽シーンの台風の目か? auのCM曲起用も話題のyonigeとは何者か

2017年1月1日、アーティスト名を明かさぬ状態で放送されたauの三太郎シリーズCMソング“やってみよう”でWANIMAがお茶の間に大旋風を巻き起こしてから早1年。そして今年、2018年のニューカマーとして大抜擢されたのが、オーストラリアと日本のハーフである牛丸ありさ(Vo・G)と、ごっきん(B・Cho)のふたりによる大阪・寝屋川出身ガールズバンド・yonigeだ。テレビから流れた牛丸のあの甘く掠れた、それでいて少し突き放したような不思議な距離感を与える歌声に惹かれた人も多いのではないかと思うし、そもそも彼女たちはどんなバンドで、どんな音楽を鳴らしているのか? 経歴や楽曲性も含めて、当記事では彼女たちの魅力を綴っていきたいと思う。


互いに異なるコピーバンドを組んでいた高校生時代に出会い、2013年にyonigeを結成。元々は3ピースバンドとして活動していたが、2015年にドラムが脱退して以降はサポートドラマーを迎えながらふたり体制で活動している。インディーズ時代にはデモを2枚、ミニアルバムを2枚、EP盤を1枚リリースし、2017年9月にリリースされた1stフルアルバム『girls like girls』を以って、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル「unBORDE」からのメジャーデビューを果たした――という経歴を持つ彼女たち。

そんなふたりが鳴らす音楽には全て「媚びず隠さず甘えずに、女の腹の中を歌う」という信条が貫き通っている。当時の彼氏との喧嘩の際に彼の好物だったアボカドを投げつけたという奇想天外な実体験を歌う“アボカド”はyonigeの代表的ナンバーだが、その波乱な恋愛談もさることながら、彼女たちは恋愛渦中に抱く幸福感や甘さを全くと言っていいほど歌わない。《だけれど星に願わせておくれよ/明日も君のことが好きでいられますようにと》(“our time city”)と、相手を好きでいたいという願いを自分の心に誓うのではなく星に託してしまうというその発想。牛丸が《君の一番になれないけど/君もわたしの一番じゃないよ》(“ワンルーム”)と歌うのは強がりなどでは決してなく、女の性が故に恋愛を求めはするけれど、もう恋愛に多くを期待していないという「見切り」が故なのだろうなと思う。そんな淋しい想いを抱く恋愛が健全で理想的なのかと言われたら恐らく答えは「NO」なのだが、彼女たちの音楽が10~20代の女子から多くの共感を得ているのは紛れもない事実だ。ちょっと不健康で少し痛い思いをするくらいの恋愛の方がなんだか良く見える、そんな若者たちの拠り所になってくれるのがyonigeという無二の存在なのだろう。



そしてそんなふたりの音楽への関心は音楽業界に留まるだけでなく、俳優・山田孝之との親交によって“ワンルーム”を題材にしたショートフィルム『点』が制作されるほど幅広いシーンにまで広がっている。5年ほど前に牛丸がツイッターで山田に「いつかライブに来てください」という内容のリプライをしてから4年後に山田が実際にライブに足を運んだ、という夢のような出来事をきっかけに交流するようになった3人。音楽と演技、方法こそ違えど互いに「表現者」として邁進している両者だからこそ繋がった縁なのだろうし、この異業種タッグが今後の日本のカルチャーにどんな波を起こすのかも気になるところだ。

春に開催される各地フェスにもすでに多くの出演が決定しているyonigeだが、どれだけ話題になり人気になろうとも彼女たちはライブハウスに根を張って生きていくという指針を曲げることはないだろうし、泥臭くも凛と胸を張って声と音を張る彼女たちの輝きは日々増しているように思う。今後更なる躍進が期待されるそんなyonigeに、これからも是非注目していてほしい。(峯岸利恵)