【知りたい】Chilli Beans.はこの5曲を聴いてハマれ!

新世代バンドの中でも、とびきり風通しのいい自由なロック&ポップを表現し、そのファッションや佇まいからも新たなユースカルチャーを牽引していく存在感を放つChilli Beans.。はなからガールズバンドという枠組みや、ロックバンドという括りを意に介することなく、チリビは常に自由にやりたい音楽を表現し続ける。それぞれがすぐれたソングライターであり、シンガーとしても図抜けたセンスを持つ3人だけに自然と楽曲も多様性を帯びるが、ポップでキャッチーでありながら何ものにも媚びない姿勢、パフォーマンスはとにかくクール。そんなChilli Beans.の「まずはこれ」という5曲を紹介。この5曲だけでも、彼女たちがいかに豊かな音楽性を持つバンドであるかが理解できると思う。(杉浦美恵)


①lemonade

Chilli Beans.はもともと音楽塾ヴォイスのシンガーソングライターコースに通っていた3人が講師の勧めによって組んだバンドだ。その3人が初めて一緒に作った曲がこの“lemonade”。全員が歌えるし曲も作れるというのがチリビの強みだが、この楽曲はMaika(B・Vo)の家で「お互いのことを知ろう」ということも含め1ヶ月ほど合宿的なことをしたときにできた曲だという。Lily(G・Vo)の持ってきたギターのコード進行をもとに3人がアイデアを出しながら完成させていき、それをヴォイスでのレッスン時に流していたところ、すぐ横にいたVaundyが「こんな感じどう?」とアドバイスをくれて編曲に携わることになったという経緯。印象的な《いやいやいやいやいや》という部分も、Vaundyの「サビ後ろに何かほしくない?」という意見から、あのフレーズができたのだという。それにしてもバンドとして初めて作った曲がこの完成度というのも驚きで、わかりやすくグッと盛り上げようとか、聴き手の気を引くためのギミックを入れようとか、そんな策略とは無縁のところで洗練されたポップミュージックとして成立しているのが素晴らしい。歌メロはポップでありながら、Moto(Vo)のクールな歌声の魅力が光る。1stデジタルEP『d a n c i n g a l o n e』収録。

②アンドロン

Chilli Beans.というバンドがポップシーンにおいてその存在感をグッと高めたのがこの曲。“アンドロン”とは「ドロンしない」=「消えない」という、Motoが考えた完全オリジナルな造語で、メロディに乗る語感の良さが抜群のセンスを感じさせる。そしてチリビの面白さのひとつはバンドサウンドに固執しないところ。打ち込みのビートやシンセもバンドサウンドにナチュラルに融合させながら自分たちの音楽を表現していく。基本的にはほとんどの曲を3人でアレンジしていくChilli Beans.だが、この楽曲も盟友Vaundyが編曲を手がけている。ロックバンド感を根底に残しつつ絶妙な肩の力の抜け具合で、シンセや打ち込みを用いながらも全体的に音数は少なめの洗練されたアレンジ。それがMotoの歌をしっかり際立たせている。それにしても《あたしさかな座。君、かに座?/タラバガニ? カニカマの方?》なんて歌詞のユニークさに唸る。これをMotoが歌うと不思議な浮遊感とメランコリーが漂って、サビのキャッチーさもそうだが、その語感の良さがクセになるのだ。2ndデジタルEP『Daydream』収録。

③マイボーイ

2022年4月にリリースした配信シングルで、ドラマ『モトカレ←リトライ』のオープニング主題歌として書き下ろした楽曲。チリビとしては初めてのドラマ主題歌となった。ドラマタイアップだからこそ出てきた楽曲のテーマで、それによってチリビの新たな魅力が表現されている。MaikaのベースとLilyのギターがユニゾンする、明るく跳ねるようなリフのイントロが耳を惹き、キャッチーなメロディでMotoの歌がキュートに弾ける。「永遠の愛」をテーマにしつつも、チリビ流のライトさとドライな心地好さでポップに歌い上げる様が小気味好い曲。3人でのコーラスワークの気持ち良さも格別。80sライクなエレクトロサウンドもドリーミーな雰囲気を盛り上げ、ギターの音色も楽曲の軽やかさを牽引している。1stアルバム『Chilli Beans.』収録。

④rose feat. Vaundy

Vaundyとのコラボ3作目となる楽曲で、この曲でVaundyはボーカルでも参加。Motoとの男女混声の掛け合い&ハーモニーにより、新たな世界を映し出している。3rd EP『mixtape』から先行で配信リリースされると、各種音楽チャートで首位を獲得するなど、チリビの名がさらに拡散するきっかけともなった。Maikaのベースラインのグルーヴを存分に生かしながら、Lilyのギターのファンキーな音色が絡んで、甘さと激しさとがミックスするこのロックサウンドは、グローバルにアプローチするものではないかと思う。さすがチリビをよく理解するVaundyだけあり、それぞれの強みを前面に押し出しつつも、自身のボーカルもラップもトラックも引くことなくしっかり主張する。そうした両者の遠慮のなさが、このフィーチャリングを非凡なものにしている。

⑤Raise

このタイアップの実現より前に、『週刊少年ジャンプ』誌上で尾田栄一郎が“lemonade”を挙げて「今、読者に聴いてほしいアーティスト」としてChilli Beans.を推していたことは初期からのリスナーには有名な話。そしてついにTVアニメ『ONE PIECE』のエンディングテーマをチリビが手がけることになった。『ONE PIECE』とのタイアップというだけあって、この楽曲の力強さ、3人の歌の頼もしさはこれまでにないものとなっている。がしかし、この楽曲はもともとバンド結成当時にすでにMotoが作っていた曲であり、20歳当時の青く衝動的な思いを歌にしたものだったという。そのストレートさ、迷いのなさこそが、『ONE PIECE』の世界観に合致した。ドラムのビートや掛け声が、一歩ずつ確かな足跡を残しながら歩んでいくようなテンポで響く。「不確かな未来を恐れず、ともに進んでいくのだ」というメッセージは、当時まさに自分自身に向けて歌ったものであっただろうが、それが『ONE PIECE』のテーマに今ピタリとはまる。サウンドにしても、偶然にも当時から「海賊っぽい音作りにしたい」と作り込んでいったものだったというから驚く。このタイアップは偶然がつないだ必然だと言える。4th EP『for you』収録。


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