【知りたい】ammoはこの5曲を聴いてハマれ!

大阪発、Orange Owl Records所属の3ピースバンド・ammo。結成からのメンバーである岡本優星(Vo・G)、川原創馬(B・Cho)に、2022年5月より北出大洋(Dr)が加わって現体制となり、2024年1月にはTOY'S FACTORYからメジャーデビューを果たすなど、群雄割拠のギターロックシーンにおいても着実に支持を拡大し続けている。
彼らの魅力といえばやはり、3ピースらしくひと塊となって突き進むパワフルかつよく引き締まったサウンド。疾走感あふれる8ビートに爆裂ファストチューン、エモーショナルな聴かせる系ミディアムチューンやひねりの効いた楽曲まで、特にライブにおいてはライブハウスで戦い勝ち抜いてきたバンドであるという自負で貫かれた熱い演奏で届けてくれる。そしてもう一つ。韻の踏み方や言葉遊び、仕掛けられたギミックの数々など、岡本によって綴られるリリック面でのこだわり具合や秀逸なワードセンスが並大抵でないこともammoの際立った個性である。どこか身に詰まされるような情けない心情やどうしようもない日常のリアルな描写さえ、ロックによって非日常のエネルギーへと昇華してみせる鮮やかなマジック。その一端に触れることのできる5曲を以下のテキストで紹介していく。(風間大洋)


①寝た振りの君へ

2020年4月にシングルとしてタワレコ限定でリリースされ、その後アルバムにも収録。再録音Ver.も存在する、ブレイクのきっかけとなった初期を代表する一曲だ。メロウなベースラインからはじまるタイトなリズムセクションが引っ張り、ギターはニュアンスをつける程度のカッティングがメインという、引き算の美学を感じる音作りが、話すトーンに近くナチュラルな岡本の歌をより引き立てている。バンドにおけるボーカルの果たす役割のうち、歌詞に描かれる舞台背景や心情面を伝える点にかなりのウェイトを割いているというammoの特徴は、この時点からはっきり出ている。弱さも駄目さも自覚しつつ大事な人の前では大きく出てしまったり、でも《思ったより最低だった僕》という自責の念にさいなまれたりもしながら紡がれていく「君」への想いは、《誰かのために生まれたんじゃないから/君に歌を歌いたいと思えた》というラインに集約される。

②これっきり

コロナ禍で音楽シーンが停滞する中でも存在感を増していた彼らが、2020年11月にOrange Owl Recordsからリリースした1stフルアルバム『会うのは別れの始め』収録。軽快な8ビートのロックサウンドはいかにも3ピースバンドといった印象で、彼らのレパートリーの中ではかなりストレートな部類と言える。ただし、そこで描かれる内容はなかなかに赤裸々で、「お互い様」とでも言うべき僕と君の関係と終わっていく関係の中で流れる時間をキスマークを題材に描いていくこの曲で貫かれるのは、変に美化したものではない、純愛と呼ぶにも値しないような、けれど一部当事者には思いっきり突き刺さるタイプのリアリティだ。恋愛の綺麗ではない部分にも目を向け切り取ることで本来の意味でのエモへと昇華した音楽は、10年代以降のロックシーンにおける大きな潮流の一つであり、その分野においてammoが非凡な才を有することを知らしめた曲。

③不気味ちゃん

2022年1月リリースの『灰汁とAct EP』に収録された、HIP-HOPやクラブミュージックのエッセンスを取り込んだスローナンバーの失恋ソング。ライブ映えするロック調の楽曲に軸足を置きつつも、実のところ音楽的リファレンスはかなり幅広いタイプで、さまざまな時代やジャンルを取り込んでいるammoだが、この曲なんてその最たるものだろう。《身体の関係》《裸とMonday》、《生憎》《会いに行く》、《寝る前のチューか》《駅前の中華》などなど挙げればキリがないほど、得意技である韻をふんだんに踏みまくるリリックはラップ調のメロディラインと相性抜群。どこか冷めた雰囲気のトラックとは裏腹に、たしかな湿度を含ませながら喪失感がじっとり綴られていくバランスも面白い。なお、『灰汁とAct EP』のリリースツアーを終えたタイミングで北出が正式加入して現体制となっており、その後の快進撃の口火を切った重要な作品群を代表する一曲だ。

④何℃でも

2024年初にリリースされたメジャーデビュー作『re:想-EP』と、配信作品として同時リリースとなったインディ期の再録集『re:奏-EP』の双方に収録された、バンドの節目を象徴する一曲。ガレージっぽい音色のギターから威勢よくスタートする、爽やかで耳馴染み抜群のメロディアスなロックチューンである。ただし、よくよく聴くとコード展開や転調で予測を裏切ってくる箇所があったりと一筋縄ではいかず、それらの要素がちゃんとフックになっているところに成熟ぶりを感じずにはいられない。《派手になった髪と化粧》《派手に散った愛の結晶》や、《I seeってマスカラとセットでBye》《愛してますからもピンとこない》《愛知ってますから大丈夫》といった、単純に韻を踏むだけでなく同一のメロディを持った箇所同士を跨ぐ形でみせる言葉遊びも秀逸で、もはやammoのオリジンと形容して差し支えないレベルに到達している。

⑤意解けない

メジャー1stフルアルバム『SONG LIE』から先行配信された、TVアニメ『小市民シリーズ』EDテーマ。ファルセット混じりのふわりとした歌い出しから、タイトながらグルーヴィーな平歌の部分、キャッチーなメロディを持つサビ、さらに展開して第二のサビ的なメロディへと、次々に表情を変えながらあくまでさらっと、しかもしっかりポップスとして聴かせきってみせる腕力がすごい。おまけにどこを切り取ってもちゃんとキャッチーで、タイアップソングに求められる要素もしっかりクリアしている。前半部分ではどこか散文的に言葉が並んでいき、曲が進むごとにだんだん焦点が絞られていくリリック面も新境地を感じさせるもので、《まだ僕ら孤独な過去に生きてる》と心情を吐露しながらも、最後は《表も裏でも君だよ/君は君だけだよ》という、歌詞内の「君」を飛び越えて聴き手にメッセージを手渡すような力強いラインで締めくくられる。


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これなら自信を持ってメジャーの世界でも戦えそうだなと思いました(岡本) 鮮烈なメジャーデビューとなったEP『re:想-EP』から半年、まだまだ進化中のammoの駆けるスピードが落ちるわけがないとわかっていたが、メジャー1stフルアルバム『SONG LIE』の自由奔放さは驚くに値する内…
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