【知りたい】BiSH快進撃、「楽器を持たないパンクバンド」の尖鋭性がお茶の間を侵食し始めたのはなぜか?


このような曲たちを表現する歌声が、とても素晴らしいのも特筆すべきことだ。誇張でも何でもなく、まさしく「魂を揺さぶられる」と紹介するのがふさわしいハスキーでソウルフル、時にはブルージーでもある声を持っているアイナ。可憐な透明感を漂わせつつ、不思議と程よい少年性も帯びているチッチ。このふたりを頼もしい切り込み隊長としつつ、全員で繰り広げる歌は、いつもドラマチックなコンビネーションを発揮している。松隈ケンタの制作チーム「SCRAMBLES」が生み出しているサウンドにフレッシュなパンクロックとしての生命を宿らせている6人の姿が、実に眩しい。BiSHのバンドスコアが今年の7月に発売されたが、彼女たちの曲をバンドで演奏するのもオススメしたいところだ。楽器演奏、合奏の喜びを知る入り口に成り得ているという点でも、BiSHは正統派のパンクバンドに非常に近しい側面を持っている。

また、6人が紡ぎ出している生々しい表現も、パンクに通ずるパンチの利いた存在感に繋がっているのだと思う。BiSHの曲は、メンバー自身が作詞を手がけているものが数多い。深い詩情を湛えた作風からユーモラスなものまで、幅広い切り口が冴えているモモコ。シンプルな表現でありながらも圧倒的に人の心を打つ言葉を放つことに長けているリンリン。このふたりの書く歌詞は、特に異彩を放っている。そして、ダンスが手作りで生まれている点にも、触れておかねばなるまい。振り付けを担当しているのはアイナ。かっこよさの中にウィットもきらめくBiSHのダンスは、キャッチーさの塊だ。例えば“プロミスザスター”には、噛み切った手の親指から滴る鮮血で大きな星の形を描くかのような動きが盛り込まれている。この曲は『ミュージックステーション』で披露されたが、視聴者の胸に強烈に焼き付いたのではないだろうか。

と、ここまで細かなことをいろいろ書いてきたが……BiSHの本質で息づいているのは、極めてシンプルな「応援したくなる」という魅力でもある気がしている。共に物語を歩んでいるような感覚になって、ハラハラドキドキできるという点で、彼女たちは王道のガールズグループでもあると言っていいだろう。『ミュージックステーション』を観ながら私が感じたのも、そういうものであった。「ハシヤスメのメガネが吹っ飛んでクビになったらイヤだなあ」、「リンリンがトークコーナーでタモリに話を振られて無口担当ぶりを発揮したらヤバイぞ」、「チッチはしっかり者だから安心だけど、大事なところで転んだりしませんように」、「アイナ、まさか変なことを突然言い出したりしないだろうな?」、「モモコがうっかり椅子と間違えて椎名林檎とかの膝の上に座っちゃったらどうしよう」、「アユニの完璧な美少女っぷりが視聴者に見つかっちゃう!」というようなことを考えながらも、「本当に良かったなあ」という想いと共に画面を見つめるのは、とても幸せなひと時であった。


BiSHは、来年の5月22日に横浜アリーナでワンマンライブを行う。『ミュージックステーション』内のCMでそのことが発表された瞬間、過去最大規模のライブであることにも胸が躍ったが、2014年7月8日に行われたBiSの解散ライブの会場に辿り着いたという点も感慨深かった。あの解散ライブのタイトルは「BiSなりの武道館」――BiSは日本武道館での単独公演を以って解散することを目標にして活動していたが、諸事情によってそれは叶わなかった。そんな想いが刻まれている場所にBiSHが立った時、また新しい何かが始まるのだと思う。少なからずアクが強いこの6人のお姉ちゃんたちは、今後さらにどんな物語を描いていくのか? 期待はますます膨らむ一方なのだ。(田中大)

BiSH、来年5月に横浜アリーナでワンマンライブ開催
BiSHが、2018年5月22日(火)に横浜アリーナにてワンマンライブを行う。 これは、本日初出演した『ミュージックステーション』のCMにて発表されたもの。本公演は、7000人を動員した幕張メッセイベントホールワンマン公演を超える、BiSHとして過去最大規模のワンマンライブとなる…
BiSH、来年5月に横浜アリーナでワンマンライブ開催
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