きのこ帝国

心の奥底のモンスターが暴れまわる

“MAKE L”のSEと共にステージに現れた佐藤千亜妃(Vocal, Guitar)、西村“コン”(Drum)、あーちゃん(Guitar)、谷口滋昭(Bass)の4人。静かなるアルペジオを轟音がさらうようなイントロの1曲目“愛のゆくえ”でライブをスタートさせた。囁くような佐藤の歌声が浮遊感を漂わせながら心地よい緊張感をもってCOSMO STAGEを支配する。オーディエンスは皆、囚われの身のように聴き入っている。ズブズブと引きずり込まれるような中毒性の高い楽曲が、きのこ帝国の魅力。しょっぱなからさすがの存在感だ。

「こんばんわ、きのこ帝国です」と佐藤が小さい声でつぶやき、“海と花束”へと続く。デニム地のロングスカートに白いトップスという佐藤のナチュラルな衣装が、冬の海で風に吹かれているようなイメージのこの曲の世界にぴったり。そして「もう2016年も、明日で終わりなんですけど。きのこ帝国の中では懐かしい、大晦日の曲をやりたいと思います」(佐藤)と、“ラストデイ”を披露してくれた。何気ない日常が、年をまたいでもまた続いていくことへのささやかな願いが、4人の繊細な演奏で届けられていく。まさに今だからこそいっそう胸に響く、極上の時間だ。

最後の曲は超絶エモーショナルナンバー“東京”。胸の内に隠した激情は、自分でも説明がつかないようなモンスターと化していることがあるけれど、そんな手に負えなさも含めて音楽にトレースしてしまう。しかも何回聴いても鳥肌が立ってしまう。そんなきのこ帝国の唯一無二の凄さをことごとくCOSMO STAGEにぶちまけてくれて、実に爽快でした。(上野三樹)

「ROCKIN'ON JAPAN3月号」(1/30発売)の付録は、このフェスのすべてを詰め込んだ特別別冊。全アクトのセットリスト、ライブ写真を完全網羅!

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