「新年明けましておめでとうございまーす! ピロカルピンでーす!!」。MOON STAGEも残すところ2組というところで、凛と響き渡る松木智恵子(Vo&G)の声が心地良い。クリアにしてダンサブルなロック・ナンバー“未知への憧憬”で演奏をスタートすると、絶妙な間と抜けの良い音色で繰り出される岡田慎二郎(G)のギター・フレーズがすっと身体に入ってくる。バンド一体のコンビネーションで内面的なテーマを力強く描き出す“存在証明”をプレイし、改めて挨拶して「私は10年前、このイヴェントを観に来て。ずっと出たいと思っていました。どんな夢も、強く願えば叶うと、信じています」と語る松木。とても落ち着いた語り口だが、その率直な言葉には内に秘めた情熱が宿されているように思える。
スズキヒサシ(B)と荒内塁(Dr)の支えるボトムは極めてソリッドだが、幻想と現実の間を行き来して広がるサウンドスケープはくるくると表情を変え、歌の世界観を押し広げてゆく。“京都”から“シェイクスピアのダイアリー”とプレイし、「行くぞー!」と掛け声を放ってオーディエンスを飛び上がらせるのは“虹の彼方”だ。彼女たちピロカルピンは2013年にメジャーで初のフル・アルバム『太陽と月のオアシス』を発表したが、2014年最初のトピックとして、この1月1日からインディーズ時代の音源を世界35カ国のiTunes Storeで配信開始。iTunes用の新たなマスタリングも施されているそうだ。それもあってか、この日のステージはインディーズ時代のレパートリーを中心に構成されていた。「ありがとうございましたーっ! 2014年、良いことがたくさんありますように!」と、最後に演奏されたナンバーは“青い月”。鮮烈でキャッチーなのに奥深い楽曲たち。そんなピロカルピンのキャラクターを、MOON STAGEに刻み付けるパフォーマンスであった。(小池宏和)
この4日間の模様を凝縮した別冊付録を、「ROCKIN'ON JAPAN3月号(1/30発売)」に封入! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。