『燃えよドラゴン』のテーマ曲に乗って、真っ赤な光に包まれたMOON STAGEに現れたのは、CDJ初出場となるThe SALOVERS。「伝説のバンドの曲をやります!」と開口一番で告げると、なんとNUMBER GIRLの“鉄風 鋭くなって”を発射! オリジナルへの愛着を感じさせるソリッドでフラジャイルな轟音がMOON STAGEの空気を切り裂いていく。そのまま「行くぞ、幕張ー!」と“HOT HOT HOT!”“チンギスハンとヘップバーン”を連打すると、バンドの演奏は一気にアグレッシヴに。スタンドマイクにかぶりつくようにして絶唱する古舘佑太郎(Vo・G)を筆頭に、頭を振り回しながらギターを掻きむしる藤井清也(Cho・G)、楽曲を前へと牽引していくリズム隊の藤川雄太(Dr/Cho)&小林亮平(Ba/Cho)と、何かに駆られるように無我夢中で音を鳴らしていく4人の姿は、ロックバンドの理想形とでも言えるような鮮烈な輝きを放ってオーディエンスの心を捉えていった。
「盛り上がっていくぜー!」と投下した“サリンジャー”では、火を噴くような爆裂サウンドとテクニカルなソロ・パートが猛スピードで展開。そこには一瞬でも気を抜いたら撃ち殺されてしまいそうな鬼気迫る切迫感が全編から立ち込めていて、フロアのオーディエンスも必死の形相で拳を振り合上げる。その一方で“文学のススメ”では、静と動を行き交うアンサンブル上で《文学 文学 純文学》という痛快なコーラスが届けられ、独特の詩情がエモーショナルに炸裂。さらに“ディタラトゥエンティ”では大気圏を突き抜けるような壮大なサウンドスケープが届けられ……と柔剛自在のセットリストでフロアを熱狂の只中へ引きずり込んでいく様は、メジャー・デビューから1年以上を経て着実に逞しくなっているバンドの今をヴィヴィッドに見せつけるものだった。 “オールド台湾”では、歌詞を「オールド幕張!」に変えてオーディエンスを沸かせるシーンも。そして「僕らの2013年をここに刻みます!」と雪崩れ込んだ“床には君のカーディガン”では、抜けのいいアンサンブルで軽やかなハンドクラップを誘い、MOON STAGEを黄金の光の中へと導いて圧巻のフィナーレを迎えた。MCらしいMCはほとんどなく、とにかく曲をどんどん叩きつけていったThe SALOVERSらしいストイックなアクト。そこで彼らが見せつけた熱い闘志は、MOON STAGEに足を運んだオーディエンス一人一人の心に確かに刻み込まれたはずだ。(齋藤美穂)
この4日間の模様を凝縮した別冊付録を、「ROCKIN'ON JAPAN3月号(1/30発売)」に封入! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。