「混沌とした現実からの、少しの逃避行。そんな物語を歌い、紡ぎます。シナリオアートです、よろしく」。そんなハヤシコウスケ(Vo・G)の言葉からスタートしたシナリオアートのステージは、まるでMOON STAGEが丸ごと物語の中に連れ去られていったかのような、忘我の世界を描き出すライヴだった。
宇宙船のエンジンを想起されるような推進力で突き進む浮遊感あふれるナンバー“スペイシー”でライヴの幕を開けると、激しいサウンドと男女ヴォーカルが狂おしいほど交錯する“ホワイトレインコートマン”、繊細なヴォーカルと激甚なサウンドが疾走する“ハロウシンパシー”と、楽曲が進むごとにシナリオアート固有の世界観がMOON STAGEをどっぷりと飲み込んでいく。「ずっとずっと、僕は、この場所で、みんなと一緒に踊りたかったんだよ! 僕らと一緒に踊りましょう!」とハヤシが語って演奏したのは、硬質なグルーヴを持った幻想的なダンスチューン“パラレルルル”。ハットリクミコ(Vo・Dr)とヤマシタタカヒサ(Cho・B)の繰り出すダイナミックなビートに、フロアは激しく揺さぶられていく。
「私たち、去年COUNTDOWN JAPANを観に来ていて、『絶対このステージに立とうな』って言っていて、本当に今年立つことになって。ほとんどみんな(シナリオアートを)知らんやろうよ。それやのに、こんなに見てくれて、昨日からずっと泣きそうで……」と、MCで感謝の思いを必死に伝えようとするハットリ。彼女の喜びと興奮が手に取るように気持ちが伝わって、オーディエンスからは大きな拍手と歓声が起こる。ドラマチックで荘厳な世界を描く“ワンダーボックス”ではヒリヒリとしたファンタジーを奏でると、「シナリオアート、最後の話。今日は偶然にも、必然にも、僕たちと出逢ってくれて、本当にありがとう。来年、僕たちは精一杯がんばっていきますので、また会えたら嬉しいです。シナリオアートでした、ありがとう」とハヤシが語り、ラストの“ハジメマシテ”へ。聴く者の想像力を駆り立てる広がりを持った歌世界でMOON STAGEを飲み込んだシナリオアート。心に深い余韻を残す、まばゆいライヴを繰り広げた彼らに、会場からはあたたかな拍手が送られていた。(大山貴弘)
この4日間の模様を凝縮した別冊付録を、「ROCKIN'ON JAPAN3月号(1/30発売)」に封入! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。