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WING TENT 15:50

アダルトな狂気

さて、昼下がりのWING TENTには町田康(Vo)による新プロジェクトである、汝、我が民に非ズが登場! 拍手と歓声で迎えられたメンバーは、ヴォーカルの町田に野田博(sax)、大古富士子(key)、中村'Jizo'敬治(G)、瀬戸尚幸(Ba)、米窪絵美(Dr)といった錚々たるプレイヤーたち。スタンドマイクの前に立った町田は1曲目の“305”でいきなりの絶唱。熟練ミュージシャンたちのどっしりと洗練されたサウンドの真ん中で、町田が声と言葉を武器にそれらを切り裂く。一層洗練されたシティ・ポップな曲調の“RB”では、時折、囁くようなヴォーカルを聴かせ、サックスの色っぽい音色がWING TENTの中で風に乗った。
“日常の五つの光景”では激しいドラムの音と鍵盤とサックスがカオティックに摩擦し合うサウンドに、町田の歌が加わることでそれがまた大きくかき混ざる。まさに化学反応のような演奏が目の前で起こっている。オーディエンスも皆、「次は何が起こるんだろう?」とワクワクしながら観ているようだ。




「ありがとう。次に演奏する曲のタイトルは“日射病”と言います。えー、原稿を用意してきました」と片手に持っていた白い紙をおもむろに読み上げ始める。「タイトルを含むこの曲の冒頭は――」と、まるで呪文のように曲紹介をした後、ギターの一音から、ゆったりとした演奏が始まった。ブルージーな演奏に詩的な歌が、独特のムードを生み出し、音楽の中にどっぷりとたゆたうような時間が流れる。
そして一転してファンキーでアグレッシヴな“情熱だけの人生”を挟んで、「次の曲は紙を見なくても歌えます。もう何百回と歌っているからです」と始まったのは“つるつるの壺”。1981年にリリースされた、町田町蔵率いるINUのアルバム『メシ喰うな!』に収録されている曲だ。歓声が沸き、パンキッシュで軽快な演奏と《おまえの頭を開いてちょっと気軽になって楽しめ》のリフレインでオーディエンスは楽しそうに手拍子。彼がまだ10代の頃の表現だが、唯一無二のオリジナリティは何百回歌っても色褪せることはない。むしろ今の彼が歌うからこその面白さに満ちていた。
「どうもありがとう!」そう言って、何度も小さく頭を下げながら、町田はステージを去った。また新たなる衝撃を見せてもらった。(上野三樹)



この4日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FES.2015」は9月12日発売予定です! 全ライヴアクトのセットリストは、そちらに掲載されます。

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