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WING TENT 12:20

魂の放浪者が問いかける、生きるということ

アコースティックギターを携えて、首元にはハーモニカを装着して、ふらりと散歩でもするようにステージに登場した竹原ピストル。「よろしくお願いします」と短い挨拶のあと、ひとり滔々と歌い始めたのは“オールドルーキー”。真っ直ぐにお客さんを見据えて、説教でもするように(叱るという意味ではなく、自らの生き様を教えを説く意味で)、歌に込めた生々しい想いを伝えていく。「ちょっと街が変わってしまって恐縮なんですが、“LIVE IN 和歌山”という歌」と、続けたのは《薬づけでも生きろ》と言い放つ強烈なメッセージソング。お客さんはそれを食い入るようにじっと見つめている。



「こんなチャンピオンだらけの大きな会場に出られて嬉しいな、という気持ちを込めつつ……」と、素朴なMCのあとに繰り出した“俺のアディダス~人としての志~”は、ジャカジャカと掻き鳴らすギターにのせて、まるで独白でもするように《人としての志》を早口で捲し立てていく。それは決して誰もマネすることはできない、竹原ピストルだけの魂の歌だ。「たった3曲で体力を使い果たすとは思わなかったけど、もうちょっとがんばって歌います」と、竹原。MCで喋れば、朴訥とした人の好さそうな風貌なのだが、ひとたび歌い始めると、さすがは自ら「ピストル」を名乗る男。ぐさぐさと心の本音を抉り出してしまう。



雨に打たれて生きる人の姿を哀愁たっぷりに歌った“RAIN”、キレ味の鋭いギターのカッティングにのせて馴れ合いの関係を蹴散らす“ちぇっく!”と、研ぐ済まされた言葉を次々に投げかけていく終盤。「お互い元気を出して生きましょう……って曲じゃないと思うんですけど、そういう気持ちを込めて」と披露したのは、中島みゆきのカバーで“ファイト!”だった。ギター1本、あとは歌だけ。それなのに、心に直接揺さぶりをかけてくる剥き出しの歌は、この暑さのなかで鳥肌が立つほど素晴らしかった。

最後のMC。「こんな立派なイベントに出させていただいて、出て来ただけで拍手をもらって、歌ったら声援をもらって……目に見えて売れてきてますよね(笑)?」と、気さくな口調で話して笑いをとった竹原。最後に、語りかけるように紡いだ“ドサ回り数え歌”で、元気でね、元気でねと、集まったお客さんへ別れを告げると、最初と同じようにふらりとステージを後にした。残された大きな歓声と拍手は、竹原ピストルが訴えた大切なもの、それが確かにお客さんの心に届いていることの証明だろう。(秦理絵)


この4日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FES.2015」は9月12日発売予定です! 全ライヴアクトのセットリストは、そちらに掲載されます。

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