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GRASS STAGE 17:10

奮い立つ魂から響いた、強く大きな願い

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015、GRASS STAGEも残すところあと2アクト――という寂寞感が夕刻の熱気に混じり始めたなか、昨年と同じくひたちなか最終日にthe HIATUSが登場! 意気揚々と舞台に現れた細美 武士(Vocal & Guitar)/masasucks(Guitar)/ウエノコウジ(Bass)/伊澤 一葉(Keyboard)/柏倉 隆史(Drums)の5人が気合い一閃、“The Ivy”の熾烈なアンサンブルが炸裂! フェスの祝祭感ごと壮絶なロックの彼方へと連れ去っていくように響き渡っていく。“The Flare”の紅蓮のアンサンブルに応えて高々と手を突き上げる満場のオーディエンスが目映い夕陽に照らされ、“Storm Racers”では熱いクラップと「行こうぜ!」の細美のコールから圧巻の狂騒空間へと突入――広大なフィールドにあふれる熱気が刻一刻と密度を増し、「すげえたくさん観に来てくれてありがとう! すげえいい1日だな!」と快活に呼びかける細美に、熱い拍手が沸き起こる。



続けて「せっかくのお祭りだから、パーッと終われりゃいいんだけど……日本人として、8月9日っていう日は特別でさ」と、長崎に原爆が投下された70年前の歴史を切々と語る細美。「うちのバンドには広島出身のミュージシャンがいます――ベースのウエノコウジさん。ウエノさんは、この時期どんな気分で過ごします?」と話を振る細美に「うちのおかんが10歳の時に、原爆が落ちまして。おかんは疎開してたんで、こうやって無事に産まれて、the HIATUSができて……よかったと思います。やっぱり、平和なほうがいいですよね?」と答えるウエノ。「いろんな友達の子供とか見てると、子供たちにはもうちょっといい未来を残してやりてえなあと思うし。新しい世界が、もうちょっと本音で生きていける、いい世界になるといいなと思って、この曲を歌います」という細美の真摯な言葉とともに歌い上げられたのは、3rdアルバム『A World Of Pandemonium』からの“Deerhounds”。アコギを奏で歌う細美の歌と、masasucksがタッピングで奏でる美しき幾何学模様の如きフレーズが、夏空の果てまで遠く広がっていく。そこから“Silver Birch”の凛としたサウンドスケープが颯爽とフィールドを駆け抜け、GRASS STAGEの大空間が見渡す限りのジャンプの波で満たされていく。




masasucksのロングトーンから“Thirst”、さらに“Unhurt”と最新アルバム『Keeper Of The Flame』の曲を立て続けに披露。緻密なビートとアンサンブルが織り上げるハイブリッドな音世界に、ハンドマイクの細美の熱唱とヴァイタリティが確かな肉体性を与えていく。そして、伊澤の清冽なピアノのアルペジオから“Lone Train Running”へ! 会場の熱気がエモーショナルな歓喜の色を刻一刻と強めたところに、「今、the HIATUSは新曲を作ってます! 相変わらず、一回聴いた時はピンとこないような、でもとても素晴らしい楽曲を、来年頭にお届けできると思います!」という細美からのアナウンスに、GRASS STAGEが大歓声で沸き返っていく。終盤は“Insomnia”から“ベテルギウスの灯”を畳み掛けて一面のシンガロングを呼び起こし、“紺碧の夜に”で堂々のフィナーレ! 奮い立つ魂だけが描き出せる至上の風景が、そこには確かに広がっていた。そして、4日間にわたるGRASS STAGEの熱演もいよいよ終幕へ――。(高橋智樹)


この4日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FES.2015」は9月12日発売予定です! 全ライヴアクトのセットリストは、そちらに掲載されます。

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