じりじりと熱い太陽に焦がされてWING TENT内にムンとした熱気が立ち込める時間に登場したのは、ROCK IN JAPAN FESTIVAL初登場の関西出身3ピースバンド、シナリオアート。バンド名にもあるように物語的で、きらきらとファンタジックな音楽を紡ぐ彼ら。その物語は3人のハーモニーが美しいポップアンセム“ナイトフライング”で幕を開けた。躍動的なドラムを叩きながらハイトーンの美しいヴォーカルを響かせるハットリクミコ（Drum / Vocal）、メロディアスなベースでサウンドをひっぱっていくヤマシタタカヒサ（Bass / Chorus）、そしてハヤシコウスケ（Guitar / Vocal / Programming）は憂いあるエモーショナルな歌声を聴かせる。音楽への愛を歌う、彼らのテーマソングとも言えそうなこの“ナイトフライング”の昂揚感に、会場のテンションが一気に上昇。そして、疾走感たっぷりの“アオイコドク”ではたくさんの手が上がり、ハットリはパワフルにドラムプレイしながら「ありがとう！」と観客に笑顔で応えた。
「ROCK IN JAPAN元気ですか。シナリオアートのステージを選んでくれてありがとう。一緒に盛り上がるように、ジャンプをしよう」とハットリが呼びかけると、次の“モウモクカクメイ”では、WING TENTがジャンプの嵐に。その勢いで、ノイジーでスピード感が爽快な“スペイシー”では観客の笑顔がはじけて、ハンドクラップが高鳴る。会場がパッと華やぐような多幸感をハヤシとハットリによる男女ツインヴォーカルが、さらに加速させていった。




ドラムの椅子に立ち上がり、「言いたいことがあるんや」とハットリ。「テントって屋根があることが特権やんか。でもテントの外まで人が来てくれてるの！　ありがとう!!……つまりね、みんなもう少しだけ前にきてあげて、陽が当たって暑いと思うからね」という。とはいえパワフルでドリーミィなサウンドに、吸い寄せられるようにたくさんの人が集まってきて、WING TENTは大盛況だ。
「ROCK IN JAPAN！　ロックってなんやと思いますか？」と今度はハヤシが語り掛ける。「1週間くらい寝ずに考えたんやけど、ロックって、自分のことを信じる意思やと思うんです。自分のこと信じてますか？　ロックしてますか？」と続け、「次のお話――」と、“ホワイトレインコートマン”へと繋げていく。音楽に込めた祈りや願いをエモーショナルに爆発させるサウンド、歌に、観客は熱いハンドクラップを送る。ハヤシはギターを振り回すようにプレイし、ヤマシタもステージの先端へと躍り出て激しいプレイで魅せていく。3ピースながら、そのサウンドはとても重厚だ。
「今日は偶然にも必然にも僕たちと出会ってくれて、どうもありがとう。これから、きたないことも、きれいなことも全部含めて歌っていくので、またライヴハウスで会いましょう。シナリオアートでした」というハヤシの言葉から、最後に演奏されたのは “ワンダーボックスⅡ”。切なさも悲しみも美しい笑顔に変えていく、力強くファンタジックな1曲だ。途中、ラテン風や、またはディスコティックになったりと、まるで音にのってぐるりと旅をするような展開に、観客の熱気はぐいぐいと上昇し、大きな歓声に包まれた。（吉羽 さおり）

この4日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FES.2015」は9月12日発売予定です！ 全ライヴアクトのセットリストは、そちらに掲載されます。