「ちょっと恥ずかしいけどよ、今回俺、最年長らしいんだ(笑)。ムッシュはいねえのか! 小坂忠はいねえのか。ロックはよう、歳なんか関係ないんだ! ……思いっきりあるか(笑)。 サンキュー、渋谷陽一!」

以上、後半のMCより。フロアはこの言葉を大拍手で迎えたわけだが、そしてそこで名前を挙げられた当フェス総合プロデューサーまで含めても確かに4日間の最年長はこの人なわけだが(渋谷がひとつ下です)、にしても。僕がこのアーティストを知ったのは80年代の前半だが、2014年の現在になってもその頃とルックスがほぼ変わらない、ただし歌と言葉とギターは年々鋭さと深さを増していく一方。そんな奇跡の64歳が仲井戸“CHABO”麗市である、と、ライヴを観るたびに思う。今日もその奇跡をまざまざと見せつける、濃密なステージだった。

これまでのCOUNTDOWN JAPANでは、麗蘭の時も、CHABO BANDと一緒の時も、ひとりでステージに立つこともあったが、今年はひとりバージョン。ゆっくりと登場、ギターの音を確かめ、SEに合わせてオーディエンスにハンドクラップをうながしたと思ったら「ヘーイ、よォーこそー!」 という言葉であのリフがスタート! “よォーこそ”だ「幕張メッセ、よォーこそー! 楽しんでってくれー!」としばしフロアにあいさつ&アオリをくれたあと、続いたのは、出た、“打破”!  1985年リリースの1stソロ・アルバム『THE 仲井戸麗市 BOOK』(当時これに人生を狂わされてしまった人が多数存在するとんでもねえ名盤)収録の1曲だが、こうして改めて聴くと、まるで2014年の今の世の中のことと、今の自分のことを歌っているようだ。
「バンドやりたいけど友達がいない奴、ひとりでもバンドはできるからよ、ロックンロールはできるからよ! という言葉に続いて打ち込みドラムと共に“ゆく歳 くる歳”へ。《さようならだけが人生じゃない さようならだけが 人生じゃないぜ》というシンプルな歌詞が、この人に歌われると本当に深く深く刺さる。MCをはさみ、しばしのギター・インプロヴィゼーションのあと、次はニール・ヤングの“Hey Hey, My My (Into the Black)”へ。古きよき洋楽の名曲に日本語詞を付けて歌う(訳詞ではなくオリジナル)、というのはこの人の得意技で、いっぱいレパートリーがあるが、今日はこれできたか。というか、今日だからこれできたのか。たったひとりでステージに立っているという事実が信じられない、すごいテンション、そしてすごい緊迫感。オーディエンスみんな、異様に真剣な表情で、じいーっとステージを見つめている。

ここで冒頭の最年長MCで場を和ませたあと、「一緒に歌ってくれ! OK、CHABO!」と清志郎のあの言葉を自分で叫び、この人が作った、日本でもっとも有名なロックンロール・スタンダードの、ギター・リフが響き始める。“雨あがりの夜空に”だ。Bメロの「どうしたんだ Hey Hey Baby」をフロアに預けたり、ハンドクラップに合わせて長々とギター・ソロをキメたり、最後のサビ前ではギターを止め、アカペラでシンガロングを促したり。最高。するとまた“よォーこそ”のイントロを弾き始めたと思ったら、替え歌で「よい年を!」とリフレインし、ステージは終わった。ラスト、「また会おうぜ!」という言葉と共にギターのフィードバック・ノイズを響かせ、深々とお辞儀し、両手を掲げる姿は、まるで少年のようだった。(兵庫慎司)




この4日間の模様を凝縮した別冊付録を、「ROCKIN'ON JAPAN3月号(1/30発売)」に封入! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。

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