雄大なSEが鳴り響き、メンバーが順番にステージに現れ、最後にタオルを高々と掲げた千野隆尋(Vo)が登場する。伊丸岡亮太(Gt)が鳴らすギターを合図に、千野がゆっくりと語り出す。「まだ外は明るいですね。ということはまだまだ今日が続くってことだよ。最高だね! さあ、素晴らしき今日を始めよう!」――そして最初に鳴らされたのは“素晴らしき今日の始まり”だ。MOON STAGEにいきなり巨大な太陽が生まれたようなエネルギーが充満していく。
続けて演奏されたのは、新作ミニアルバム『6番線の箱舟』からの新曲“水中都市”。ヒリヒリとした実感を疾走感のあるサウンドに乗せて放つ5人。高橋誠(Dr)のダイナミックなドラム、両サイドに立つ宇佐美友啓(Ba)と岡崎広平(Gt)のプレイもそのドライヴに拍車をかける。演奏を終えると千野がオーディエンスに語りかける。「今年を振り返ってみると、それぞれに悲しいこともつらいこともたくさんあったと思います。でも、それに負けなかったから今みんなはここにいるんでしょ?」。そしてバラード“花”へ。抑制されたアンサンブルの上で、千野の歌が静かに、しかしエモーショナルに広がる。
ここで宇佐美によるMCタイム。今日がGOOD ON THE REELにとって今年最後のライヴであるということで、改めてお客さんに感謝を告げる。さらにメンバーに向けても「今年1年、ありがとうございました」とお礼をする宇佐美。律儀だ。「僕はメンバーのことがより好きになりました」という言葉にはフロアから歓声が上がる。そしてここからがクライマックスだ。アップテンポな4つ打ちのビートがフロアの手拍子を誘う“シャワー”では《赤と青をうまく回して》というフレーズに合わせてたくさんのオーディエンスの腕がぐるりと回る。彼らのライヴではおなじみの光景だが、このスケールで展開すると壮観だ。そしてラストは“ハッピーエンド”。温かい手拍子に包まれながら、「今日はいつか、みんなが何度でも思い出して、何度でも笑えるような日にしてほしいんだよね。自分自身で最高の1日にしてください!」。力強くそう言うと、千野は優しく歌い出した。光そのもののようなメロディと声に、すべての感情が濾過され、美しく輝き始める。GOOD ON THE REELの音楽が持つ力とその醍醐味を全力で表現する、最高のライヴだった。(小川智宏)
この4日間の模様を凝縮した別冊付録を、「ROCKIN'ON JAPAN3月号(1/30発売)」に封入! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。