2014年にメジャーデビューを果たした、Fly or Dieのステージ。まず、サウンドチェックの時点で内野くん(Dr.)、♨堕(Ba)、魅蛙(Key.)、セ☆イン(Gt.)の4人がT-SQUAREの“TRUTH”をカヴァーしたのだが、ここで早くも笑った。上手過ぎる。いよいよの本編は、優雅なSEの中に女性の英語ナレーションが伝い、オーディエンスをローズと呼んで歓迎してくれる。そして紹介されるメンバーがひとりずつ登場。最後に、マキタスポーツ扮するDar'k~ness(Vo.)が、薔薇の花が飾られたマイクスタンドの向こうでシルエットを浮かび上がらせながらポーズを決めると、バカテクで過剰にシンフォニックなメタル・イントロ“Fly or Dieのテーマ”が奏でられる。

「我々は、日本最高齢でデビューしたヴィジュアル系ロックバンド、Fly or Dieである。なぜ、ここに来た。なぜ、ストレイテナーを観に行かなかった。よし、お前達の目を潰してやろう。我々の名を世に知らしめた、あの曲をお前達に進ぜよう」と“Virgin Marry ~聖母マリア~”に向かう。Dar'k~nessが豊かな倍音を響かせて伸びやかにファルセットで歌い上げる、この歌唱力がまた素晴らしくて可笑しい。振り付けをレクチャーする女子ダンサーも交えたステージで、オーディエンスに「今ちょっとフライングした。小さく振りかぶって、Fly or Die!! よし!」と決めポーズを揃えさせる、親切設計のパフォーマンスだ。

ユーモラスで支離滅裂なメンバー紹介を経て「そんな我々はFly or Die!! やれ!!」とMC中も油断は禁物なわけだが、続いて「お腹が空いてこないか?」と繰り出されるのは“Deathdonald”だ。CMで聞き覚えのあるジングル・フレーズが聴こえる中、「廃油で揚げたデスポテトはいかがかな?」と商品を手に取って差し出すところも芸が細かい。「ところで皆に訊きたいことがある。君たちは人か? それとも豚か? NO! 君たちは皆、一輪の薔薇だ。Fly or Dieのライヴでは、ファンのことをローズと呼ぶ」と説明するDar'k~ness。頑張って頭を振ったローズはクイーン・ローズなど新たな称号が得られ、「ブラック・ローズになると、セミナーが開ける」のだそうだ。

バンド活動の生命線である物販紹介を済ませると、「アンコールありがとう」と勝手にアンコールを始めるDar'k~ness。披露されるのは歌謡テイストのディスコ・ロック・チューン“矛と盾”だ。ヘヴィなエンヤトットのリズムで跳ね回り、そして一面のヘッドバンギングが繰り広げられると、Dar'k~nessは一輪の薔薇をかざし、「今日は皆がクイーン・ローズだ。4月24日、六本木 morph-tokyoのワンマン・ライヴで会おう」と立ち去る。ロック/ポップ・ミュージックに対する造詣の深さ、そして強烈な批評精神に裏付けられた、笑いっ放しのステージであった。(小池宏和)





この4日間の模様を凝縮した別冊付録を、「ROCKIN'ON JAPAN3月号(1/30発売)」に封入! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。

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