2日目のGRASS STAGEも終盤戦というところで、ロック歌姫・木村カエラが2年ぶりにひたちなか帰還のステージである。姿を見せた彼女は燃えるように赤いノースリーブ+パンツという衣装を纏い、ピアノのイントロに導かれていきなり“Butterfly”の美しいメロディを歌い上げる……が、これは1コーラスのみの歌唱で、その熱気を和らげたひとときを切り裂くように鋭いギター・リフが轟く。のびのび生き生きとしたロック・ソング“リルラ リルハ”がオーディエンスの体を揺らし、「まだ元気ー!? 元気出して行きましょう! “TREE CLIMBERS”!!」と更に熱を帯びて加速するロック・チューンを届けてくるのだった。しかも、これがほとんどメドレーのようにノンストップで“マスタッシュ”へと連なり、ステージ上を何度も右へ左へと移動しながら歌い上げてゆくのである。彼女のアーティストとしてのエネルギーの大きさは知っているつもりだが、なんだろう、この力を持て余して仕方が無い、とでも言わんばかりの性急さは。
「皆さまこんにちはーっ!! 私にとっては、久々のロッキンであり、ライヴであり、この日をとても楽しみにしておりました……こんなに、人多かったっけ……キャーッ! ライヴだわ!! あー楽しい!」と喜びを溢れ出させるカエラ。もうこの人は本当に、歌うことが、ライヴを行うことが、好きで好きで仕方がない人なのだ。7月リリースの“OLE!OH!”は、新曲であるにも関わらずオーディエンスを巻き込んで振り付きで楽しく披露されてしまうし、“Jasper”はあのダンスをフィニッシュまでビシッと決める。持て余したエネルギーをすべて癒しの力に変換して届ける“Sun shower”の名演に続いて、キラッキラの力強いサウンドに後押しされながら辺り一面のタオル回しを誘う“Circle”はやはり今回も壮観だ。
「元気だよね? 激しいの、ガーッとやっていいですか? いけるのかーっ!?」と力強いハイトーンで問いかけ、自らもギターを抱える。ゴリッゴリの“BEAT”から、再びハンド・マイクで所狭しとステップを踏み、身振りを交えて放つ“Yellow”。そしてここでもほぼ間断なく畳み掛けられる“You know you love me?”。最後の最後には、イントロの中で「ジャンプするとこ、見せてね。この曲は、ジャンプしないと始まらないの」と前置きして歌われる“Magic Music”が、まんまとオーディエンスを激しく波打たせてしまった。元気で明るいナンバーなのに、なぜだろうか、カエラがこの曲で大勢のオーディエンスを跳ね上がらせる光景には、いつも泣きそうになってしまう。木村カエラもまた、めでたくデビュー10周年。新旧の名曲と共に、彼女のロック・アーティストとしての爆発力を改めて痛感させられたライヴであった。(小池宏和)
この4日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」は9月13日発売予定です! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。