バンド名や、クールな佇まいのアーティスト写真ということもあって、ヒリッヒリに乾いたとんがったギター・ロック・バンド、と思われがちなSuck a Stew Dry。しかし実際は、心地好くその既視感を蹴飛ばしてくれる、痛快なバンドだった。
たしかに王道感も疾走感もあるギター・ロックで、ナイーヴさも全開の曲ではあるけれど、これがとてもフレンドリーに響く。1曲目の“遺失物取扱所”から、ハジオキクチ、フセタツアキの左右のギタリストに加えて、ヴォーカルのシノヤマコウセイもギターを奏でる、計3台のパワフルなリフやフレーズの絡みで、サウンドはどんどんカラフルになっていく。観客も、いつのまにか笑顔とハンドクラップをステージに贈っている。
「改めまして、Suck a Stew Dryです。よろしくお願いします――」(シノヤマ)
「おーい、シノヤマ! 気合い入ってない挨拶じゃダメだろ!! 手本見せてやって」とフセがハジオに振ると、賑やかなあいさつで会場を沸かせていく。このふたりの温度とは裏腹に、飄々とした調子で「じゃあ……元気な曲あるんで」とシノヤマが紹介したのが、“アイドントラブユー”。カントリー調の、ねじくれたポップ・チューンで、シニカルな歌とほっこり陽性の雰囲気とが同居したサウンドは、なんだかこのバンドらしいなと思ってしまった。
「この前ね、チャック全開のままライヴしちゃって。しかも、出ていたイベントが『見放題』というイベントで(笑)。今日は、ROCK IN JAPANなので、ちゃんと締めてきました。そして、せっかくのROCK IN JAPANなので、新曲持ってきました」(シノヤマ)。ずっこけてしまいそうなエピソードからプレイしたのは、9月リリースの1stアルバム『ジブンセンキ』から“僕らの自分戦争”。ダンサブルな4つ打ちビートの躍動感と、らせん状に駆けあがっていくメロディが爽快な曲だ。こういったパンチのある曲もあり、不器用で涙がたっぷり染み込んだような曲もあり、そして最後にプレイした“世界に一人ぼっち”のようなメランコリーをギターにのせてバーストさせる曲もある。まだまだいろんな表情を持っていそうで、どの曲もすぐにでも口ずさめるキャッチーさ。観客が、どんどん虜になっていくのがわかる、とてもいいステージだった。(吉羽 さおり)
この4日間の模様を凝縮した「ROCKIN'ON JAPAN増刊号 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」は9月13日発売予定です! 全ライヴ・アクトのセットリストは、そちらに掲載されます。