ジェイソン・ムラーズ
『ノウ。』
8月10日(金)発売
なんだろう、この人の作る音楽、歌詞、声から伝わってくる優しさの正体は。2014年の『イエス!』から4年。ジェイソン・ムラーズの最新作『ノウ。』は前作よりさらに温かさに満ち溢れたアルバムだ。アルバムに先駆けてリリースされたファースト・シングル“ハヴ・イット・オール”はジェイソンが2012年にミャンマーを訪れた時、現地の僧侶から与えられたご加護の言葉を自身の中で消化し、訳したものだというが、こんなにもピースフルで幸せな気持ちに浸れる曲を聴いたのは何年ぶりだろうか。
ジェイソンいわくこの曲は「自分は何のために生きているのだろう?」と考えた時に生まれたそうだ。なぜ彼はそこまで「人生の目的」を見出すことにこだわるのか。彼はその壮大な問いの答えは音楽の力を借りれば見つかると思うというが、まさにこのアルバムにはその答えのヒントが随所にちりばめられているような気がする。
同じく新作からの先行シングル“マイト・アズ・ウェル・ダンス”のMVは2015年に結婚した妻のクリスティーナとの結婚式のビデオが全編にフィーチャーされていて、演技ではない新郎(ジェイソン)のリアルな喜びが爆発している。愛する人と出会えた喜び、孤独を感じる時も1人じゃないと思える安心感、未来がわからなくても明日への希望を持つことの大切さ。
この4年の間に人生の伴侶を得て、前作から続く「愛」や「平和」といった普遍的なテーマが最新作ではさらにパーソナルな要素を含み、聴く人の心にスッと染み込んでいくような癒しがある。1歩踏み出す勇気が出ない時に背中をポンと押してくれるような、爽やかなフォーク・ポップ・サウンドに乗せて歌われるどこまでもポジティブなメッセージは、音楽によって喜びを与え続けたいと願う彼の信念そのものなのだ。(木船陽子)